お宅訪問
マヤとハルカは十五畳ほどの広さリビングに通された。
空調が効いており、寒さを感じることはなかった。
高層フロアの部屋の大きな窓から外を見ると、暗い街に白い雪が降り注いでいくのが見えた。
室内の家具はモノトーンをベースにしたシンプルなコーディネートになっている。
多めのソファーがL字型に配置してあり、中央のローテーブルもなかなかの大きさだ。
テーブルの上には、ノートパソコンとリモコンが何個か、それと数冊の本が積んである。
ヴァナキュラー文化について書かれた本のようだ。
壁側に置かれた大型TVの横に数種類のゲーム機がセットされている。
室内は片付けられており、空のペットボトルが転がっているようなこともない。
「こっちが客間。ベッド2つあるから、この部屋を2人で使って。羽毛布団と毛布も出しとく」
「そっちの奥は俺の寝室なんで、入らないで」
「ここがトイレね」
「で、こっちがお風呂と脱衣所兼洗面所。内側からロックかかるから。タオルはこのラックのやつを。使用後は洗濯機に入れておいて。着替えは、このスエットとシャツをいくつか渡すから好きなやつを使ってね。ちゃんと洗濯してあるから大丈夫だと思うけど」
「タイマーでお湯張りしてあったはずなんだけど……、まあ大丈夫かな。追い焚きしておく。結構広いから2人なら一緒に入っても大丈夫だよ。ドライヤーはここ。その辺に置いてある化粧水とかクレンジングクリームとかは自由に使って」
「じゃあ食事、用意しておくから、風呂入ってきちゃってね」
マヤとハルカは気づいた時には、2人で並んで湯船に浸かっていた。
「「はっ!!いつの間に!!」」
「ハルカちゃん、私、記憶がないの……」
「マヤさん、私もです……」
「マヤさん……私、今、すっぴんです……」
「安心して。私もよ」
マヤが更衣室・洗面台へと続くスライドドアを睨んだ。
洗面台は広々と造られており、その前に小さな椅子も置かれていた。
壁のラックにはドライヤーとともに、アキのであろうヘアクリームなどの整髪料だけでなく、さまざまなものが置いてあった。
「なんでPOLAのB.Aなんてあるのよ……」
「マヤさん、「一度使って見たかったの!」って言ってましたね……」
「シリーズで置いてあったわね……。あれ1本1万とか2万とかするのよ」
「クレンジングにウォッシュにローションとミルクと他にも置いてありましたね……」
「遠慮なく使っちゃったわね……」
「はい。とても、よかったです……」
浴室内にはメーカーの異なるシャンプーとコンディショナーが3本づつ置いてある。
その横にメンズ洗顔料のGATSBYが置いてあるので、アキが化粧落としを使用しているわけではなさそうだ。
「「オンナがいるわね(いますね)!!」」
「アキちゃん、結構好みだったんだけど〜」
「B.Aってことは少し年上ですかね」
「ゔぁ〜全てが面倒臭い〜もうすっぴんでいいかもぉ」
「マヤさん、ぜんぜん綺麗ですよ!」
「ありがと〜ハルカちゃんも可愛いわよ〜って、ほんと良いおっぱいしてるわね……」
お風呂を出ると、ドンキで買い求めたアンダーウェアを身につけ、アキから借りたシャツやスエットを着込んだ。
男性用のLサイズなので大きいが、腰紐を絞ればなんとか着れた。
どうやら化粧水なども肌にあったらしく、頬がツヤツヤしている。
マヤのバッグから取り出したポーチの中身を使ってなにやらしていたので、すっぴんではないのだろう。
多分。
「「お、お風呂いただきました」」
忘れずに回収した衣服を客間に置いた2人がリビングに戻ると、ローテーブルの上に食事が用意されていた。
スプーンやフォーク、箸などのカトラリー3人分置かれている。
大ぶりのボウルに盛られたサラダと小さい空の繭型ボウルが3つ。
ドレッシングが胡麻・イタリアン・アイランドの3種類。
カレー皿が並べられており、大ぶりの鳥もも肉が入ったカレーソースが盛り付けられていた。
スパイスの香りがリビングに広がっている。
氷だけが入ったグラスも並べられている。
テーブルの隅には2リットルの無糖ダージリンティーのペットボトルが置かれており、 その横に炊飯ジャーとシャモジ、それと小さな鍋が置かれている。
「あ、風呂でた?カレー出来てるよ。ご飯は自分で好きな量盛ってね。サラダやお茶は適当にやって」
キッチンから戻ってきたアキが壁の時計を見て苦笑した。
すでに12時半近い。
「深夜に食べるようなもんじゃないし、口に合うかわからないけど」
3人はテーブルを囲んだ。
ちょいちょい見かける「雨に濡れた誰かを自宅に泊めた」系のお話。
野郎相手なら「風呂入っていいよ」は問題ないけど、女性は簡単に「ありがとう」とは言えない気が。
下着どうするんじゃ!ノーパンかい!ナイトブラ用意しとけや!
お前んところでスキンケアできんのか!に加えて、付き合ってもいない野郎にすっぴんを見せるか否か。
今回は残業で疲れたOLが、思考停止状態の中、クレンジングに手を出してしまいました。
スッキリして寝たかったんでしょう。
もう1人は巻き込まれ事故。
少しは取り繕ったのか、やっぱり面倒になったのか、それは不明。




