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アキが1階のリビングに戻ると、マサムネと葵はすでに片付けをあらかた終えていた。
「お疲れ。撤収手伝えなくて悪い」
「いや、大丈夫だよ。タエ婆ちゃんも、ひ孫が珍しく勉強してるって喜んでたし」
「で、秋人くんは幼気な中学生相手に不埒なことをしてないよね?」
葵の言葉に、アキが呆れた表情を浮かべた。
「向井さんは俺のことをなんだと思ってるんだ…。ちょっと数学教えてきただけだよ」
「あ〜これは暫く男を見るハードル上がるな」
「そうだねぇ……」
「ほら、次もあるんだから、どうでも良いこと言ってるなって」
一行はタエさんとオバ様に礼を述べて、木梨家を辞した。
のぞみとゆり子のコンビも見送ってくれた。
雪はまだ降っているものの、朝より弱くなっている。
もう暫くすれば止むかもしれない。
「教授、次は11時に吉沢郷土資料館で良かったですよね」
「そうだな。タエさんの話が思ったよりスムーズに進んだから、順調だ。どのくらいかかるかね?」
「えっと…10時55分到着予定ですね」
アキが助手席の教授と次の予定地について話していると、後部座席の葵がスマホで何かしている。
マサムネが葵に尋ねた。
「次はあと20分くらいだって。…何してるんだ?」
「うん?いや、なんでもないよ〜」
「(LINE?)」
「(あー、ちょっとリカとやりとりしてるだけ)」
「(なんて?)」
「(秋人くんが中学生に粉かけてたって)」
「(お前、やめとけって…)」
教授は予定を確認すると、後ろのマサムネに話しかけた。
「加藤くん、吉沢郷土資料館では貴重な資料を見せていただく。その時は君の作業が重要だからね。よろしく頼むよ」
「あ、了解っス。今回持ってきたスタンドスキャナーは結構性能いいので、パソコンとスキャナの作業スペースさえ確保できれば、それほど時間はかからないと思いますよ」
「マサムネ、そのスキャナってどんなヤツなんだ?」
「デスクライトにカメラが付いてる感じ。ライトの下の台に資料を置くと、ピント合わせて撮影できる。本は開くとたわむだろ?ある程度だけど自動的にデータを平面化してくれるから、まっすぐ伸ばさなくてもいい。だから文書への負担が少なく済むんだ」
「本当に便利になったものだね。フィルムカメラで撮影していた時は、取材先から帰って現像して何度絶望したことか…」
「ムネが撮影で私がページめくりをやります。秋人くんは教授が選んだ資料を運ぶ係ね」
「了解」
教授が深く頷いている。
「貴重な文献や資料はなるべく早くデジタルデータ化したいんだが、何しろ小規模の場所だと予算がなかったり、高齢者ばかりでそういう知識に疎いところも少なくないのでね…」
「わかってます。今日やるのもごく一部っスね」
「とりあえず傷みが大きいものから優先して作業する予定だから、皆注意してくれ」
「「「はい」」」




