朝食会場 2
葵はリカと食事を取ることにしたようだ。
マサムネが大盛りにしたご飯とおかずを持って戻ってきた。
「いただきます」
手を合わせて飯を食い始めたマサムネを見ていたアキは、梅田教授に言われた言葉を思い出した。
「そう言えば、昨日こっちに合流する前にウメセンから、小松原教授に無茶振りされるかもしれないから気をつけろって言われたよ」
「むぐぅ。はんらって?」
「無理に喋んな。汚い。なんか昔フィールドワーク中に学生が骨折したとか」
お茶を流し込んだマサムネが答えてくれた。
「ああ、それか。知ってるよ。ゼミのOBから聞いてる」
「マジでそんなことあったん?なんか危ない崖を登らせられたとか…」
「いや、実際は違うらしい」
「だよなぁ。教授とそんなに付き合いないけど、危ないことさせるタイプにも思えないし…」
「あれだろ?山ん中の崖の社に写真撮りに行かされた学生の話」
「そうそれ」
「ちょっと待って。先に食っちまう」
マサムネはそう言うと食事のスピードを上げた。
少しして全ての料理を平らげると、お茶を口にした。
「山は山だったんだけど、全然緩やかな山に六人で調査に行ったんだ。登山ルートを登ってるときに、学生のひとりがトイレ行きたくなって。しょうがないから、ちょっと道外れて立ちションしにいったんだけど、そいつが古い神社を見つけたんだ」
「神社?まあ、珍しくはないだろ?」
「でも地図に載っていない神社だったらしい。しかも板がたくさん打ちつけられてたって」
「あれか?もう管理する人がいなくなったってヤツ。ホームレスとか動物が入り込まないようにするって言うよな」
「かもしれないな。で、元々組んだ予定より遅れてたらしくて、先生はそんな神社いいから先に進もうって言ったんだけど、そいつがその神社を見に行っちゃったんだよ」
「で?」
「OBは先生と一緒にそいつを連れ戻しに行った。そしたらそいつは社の中に顔を突っ込んでた。ところどころ板が剥がれ落ちてたんだ」
「なんか嫌な感じだな…」
「OBがそいつのベルトを引っ張って引き摺り出したら、そいつはちょっとボーッとした後、ゲラゲラ笑って山の中に走って行っちゃった。みんなびっくりして、慌ててそいつを追いかけて、なんとか捕まえたんだ」
「完全にアウトだろ、それ」
「で、そいつが捕まったのは良かったけど、捕まえた方のひとりが途中ですっ転んで骨を折ったんだって」
「結局その神社なんだったんだ?」
「よくわかってないみたいだよ。捕まえるまでに20〜30分くらい掛かって、道からも外れて、下山ルートに出るのも一苦労だったし、怪我人出たから救急車呼んだりで、フィールドワークどころじゃなくなったって」
「そりゃそうか。じゃあ神社もどうなったか、わかんないのか」
「なんか神様の祟りとか、そんなんじゃねえの?OBから最初聞いた時、マジでビビったよ」
「あ、オカルト系?いや、そっちじゃなくてさ…」
マサムネとアキが話していると、葵とリカが来た。
「ムネ、秋人くん、もう8時10分だから、時間無いよ」
「小松原さんに昨日のお礼だけしたいから、後でご挨拶だけさせてもらっても良い?」
アキは頷いて三人の顔を見渡した。
「了解。ロビーに25分くらいに集合ね」




