表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/55

ホテル 1

 タクシーでホテルに戻った四人は、フロントで部屋のカードキーを受け取った。


 葵とリカがロビーで連絡先を交換して、何か話している。


 アキはマサムネに小声で話しかけた。

「(なあ、マサムネ。今晩、向井さんの部屋に行ってこい)」

「(え?)」

「(さっきの話で、向井さん、かなりショック受けてた。少し、慰めてきてくれ)」

「(だったら秋人も…)」

「(アホか。あと俺はこの後リカと約束がある)」

「(…んだよ。いつの間に。もう敵わねえよなあ…)」


 リカが葵の耳元で何か呟くと、葵がニヤニヤし始めた。




「明日、8時半出発だから、一応8時過ぎにはロビー集合な」

「りょーかい」

「朝食7時からだって」

「葵ちゃん、じゃあ朝は一緒に食べよう。7時半頃で良い?」

「うん。あ、秋人くんたちも寝坊しないようにねぇ」

「はいはい。それじゃ、おやすみ」



「ちょっと着替えてからアキの部屋に行くから」

 部屋の番号をリカに教えたが、一度部屋に戻るようだ。


 アキはホテルの自販機で酎ハイを購入した。


 706号室に入り酎ハイをテーブルに置き、寝巻きのスエットに着替えた。

 ベッドの枕元に目覚まし時計があったので、タイマーをセットしておく。

 7時くらいで良いだろう。




 ベッドに寝転び、テレビをつけてぼんやりしていると、ドアがノックされた。


 ドアを開けると、ネイビーカラーのルームウェアに白いパーカーを羽織ったリカが佇んでいた。

 ルームウェアは裏起毛なのか、かなり厚手で暖かそうだ。


 部屋に入ったリカはキョロキョロと部屋を見回した。


「アキの部屋もあんまり変わらないんだねえ」

「ビジホだからこんなもんでしょ。少しだけど買ってきた。レモンとグレープフルーツ、ピーチとグレープ、何が良い?」

「あ、じゃあグレープもらうね。ありがとー」

「どういたしまして。じゃあ、乾杯」

「カンパーイ」


 リカは酎ハイを飲んだ後、パーカーのポケットからお金を取り出し、アキに渡した。

「これ、さっきのバーの飲み代。ちょっとだけど」

「…わかった。じゃあ貰っておく。これでもう気にしないでくれ」

「うん。ご馳走様」

 リカがニコリと笑った。







 アキはレモン酎ハイを飲みながら、猟師と大蛇の物語をリカに話した。

 リカもたまにツッコミを入れつつ、飲み物を口にした。


 一通り話し終えたところで、リカが呟いた。


「……人ならざる者との恋かぁ。…ねえ、旦那さんは、奥さんが蛇ってことを知っていたと思う?」

「どうだろうね…。多分気づいていたんじゃないかな。奥さんが家を出て行った時、彼は奥さんのことを何も言っていなかったし」

「うん…」

「全部知っていて、でも奥さんのことが大好きで、絶対何も言わないって決めてた気がする」

「…どうして?」

「猟師はずっと一人だったから、寂しかったんだと思うよ…」

「そっかぁ…。寂しいのは、嫌だよね…」



 右手に2本目のピーチ酎ハイを持っていたリカが、左手を伸ばしアキに触れた。

 アキも何も言わないで、リカの好きなようにさせている。


「…何だか寂しくなっちゃった。少しだけ、一緒に寝てくれる?」

「…ああ。俺で、良いのなら」


 リカはアキの手を引いてベッドに倒れ込んだ。


 アキは枕元のスイッチで、部屋の照明を落とした。




 少しの間抱き合ってから、軽いキスを交わして、目を合わせて、ちょっと笑って、深いキスをした。


 ゆっくり抱きしめあっていると、リカが言った。


「アキがいて良かった…。ねぇ、なんでダイキリだったの?」

「…特に深い意味はないよ。何だか、リカの話を聞いていたら、飲みたくなっただけ」


「そう…。でも、カクテルにも花言葉みたいなの、あるんでしょ」

「…よく知ってるね」


「ジャネルに教えてもらったの。「ピンクレディ」は、「いつも美しく」。「テキーラサンライズ」は「情熱的な恋」。「アプリコットフィズ」は「振り向いて」とかね」


「ジャネルは魅力的な女性なんだね」

「ええ。ニッキーもミシェルも素敵な人よ」

「リカも、ね」


 リカがもう一度深いキスをした。


「ありがとう。…「希望」のカクテルを飲むアキも素敵だったよ」

「…偶然だよ。恥ずいわ…」


 アキは立ち上がるとバッグから何かの箱を取り出した。

 コンドームのようだ。


「アキ…コンドーム持ち歩いてるって、やっぱりモテるのね」

「そんなんじゃなくて、ん、マサムネを焚きつける小道具だったんだけど。自分が必要になると思ってなかったよ」

「じゃあ、タイミングが良かったって思っておく」

 リカが笑った。





「少し寒いから、暖めて……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ