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バー 4

「だからアメリカ人観光客が日本の店舗はセキュリティが存在しないって驚くのか…」

 アキが呟いた。


「重犯罪者が多くて困るからって、規制を緩めて犯罪を誘発するって訳がわかんねえ」

 マサムネが憮然としている。


「日本も、そうなっちゃうのかな…」

 葵が呆然とした。


「どうだろうね。アメリカに比べれば、まだドラッグの被害も少ないから、今のうちにちゃんと取り締まることができれば、大丈夫って思いたいわね」

 リカがカシスソーダを口にしている。


「でも日本の大学生の間でもマリファナが出回っているってニュースで見たわ。あなたたちは大丈夫、だよね?」

「もちろん!私、大麻なんて見たことないもん」

 リカの言葉に葵がすぐ答えた。


「…俺はバイトしてる時に客の一人から、ウィードに興味ある?って言われたことはある。店長がそういうの嫌いだからすぐに出禁にしてたけど」

「本当に?」

 アキの言葉に葵がギョッとしたが、それ以上にその後のマサムネの言葉に驚いた。


「俺、ウチのOBってヤツから大麻樹脂ハシシってのを見せられたことあるよ」

「マジか?」

「ああ…。タケっているじゃん。一緒に飲んでたらあいつのサークルのOBの何とかって奴が来てさ」

「それで?」

「奢ってやるって言われて、何軒か連れ回されて。で、結構飲んだところで、小さいビニールに入れたカレールーみたいなの見せられて。「お前らやったことあんだろ?え、ないの?ダッセェなあ」って」


「タケって結構チャラいヤツだろ?」

「見た目はそうかもしれんけど、断ってたよ」

「悪い」


「結局そんときは俺らが大麻に触ることなかったけど、スッゲェ勧められた。タバコなんかより害ないのに、めっちゃ良いとか、…その、…セックスの時にやるとやべえとか」

「あー。俺もそれっぽいの言われたよ」

「そのOBとはそれから会ってないけど、タケと飯行くとそん時の話する」

「…なんて?」


「タケから「マサがいたから断ったけど、最近結構話題になってて、ちょっと興味あったから、一人だったら断れなかったかも」って言われた。……俺もだった」

「ムネ!」

「いや、全然使う気なんてなかったよ。たださ、結構酒入ってたし、芸能人が捕まってもやるってどんなんだよって、ちょっと思うじゃん…」

「…ああ。ちょっと、わかるよ」


「バカムネ!」

「ゴメンて。絶対やらないから」

「わたし、やだよぅ…。バカムネがもっと馬鹿になっちゃう…」

「お前、バカバカ言い過ぎじゃねぇ?」


 マサムネと葵がいちゃつき始めたのを横目に、アキはリカに礼を言った。


「リカ、色々教えてくれてありがとう。勉強になった」

「別にマリファナ吸っても、すぐにどうこうなるとは思わない。ただ、なんか混ぜられてもわからないだろうし、気づいた時にはってことも、ね?」

「そうだね…」


 リカはカシスソーダを飲み干すと、三人に深々と頭を下げた。


「私の方こそ、みんなに話を聞いてもらえて良かった。ミシェルが亡くなってから色々調べたの。でも、日本に帰ってきてからは、なかなか親や友達にも話しにくくて」

「そっかあ…。でも私はリカちゃんに出会えて、話せて良かったよ」

「俺も。さっきも葵と話したけど、やっぱりドラッグって怖いな」

「なかなかリアルな話なんて聞けないから。うん。やっぱり、ありがとう」


 リカが照れて笑った。


「やめてよぅ…。私もご馳走になっちゃったし。ねえ、それより三人は大学の教授とフィールドワークできたんでしょ?何か面白い話、ないの?」

「えっと、今日九十過ぎのおばあちゃんのところに行って、色々聞いたよ」

「あ、そうそう赤毛のモジャモジャの話とかさ〜」

「モジャモジャ?」


 バーのスタッフがアキたちのテーブルを訪れた。


「もう10時半になりますので、そろそろタクシーがきます。お会計で宜しいですか?」

「あ、はい。ありがとうございます。じゃあ、これで…。ええ。一緒に会計してください」


 アキがスタッフにお金を払っていると、葵とマサムネが席を外した。

「そんな時間?私ちょっとお手洗い行ってくる」

「俺も」


 リカは少し名残り惜しそうに呟いた。

「私の話ばっかりになっちゃったね…。モジャモジャの話とかチョー気になるんだけど。葵ちゃんの部屋で続き聞こうかなあ」

「…もし良かったら、俺の部屋に来る?」

「なに?私、誘われてる?」


 アキも少し笑った。

「リカはすごく魅力的だと思うけどね。今日はアイツらを二人っきりにしてやるって約束してるんだ」

「え?なに?え〜、そうなんだ。ていうか、まだ付き合ってないの?あの二人」

「うん。悪いけど、ちょっと協力してくれると助かる」

「しょーがないわね…。じゃあアキが面白い話、してね」

「面白いかは知らんけどね」


 二人して笑っていると、マサムネたちが帰ってきた。


「タクシー来たって。帰ろうぜ」

<大麻の連邦法と州法の扱いの差異について>

連邦法上…「違法薬物」。『スケジュール1』というヘロインやLSDなどの薬物と同じ危険性があり、濫用の可能性が高く、医学的価値を認められていないドラッグというジャンルに振り分けられている。

州法上…23の特定の州では「合法化」または「非罰化」。


<アメリカ大統領選挙について>

2024年11月に開催されるアメリカ大統領選挙に、現職のバイデン大統領と前トランプ大統領などが立候補しています。

彼らの大麻やドラッグに対するスタンスについて、少しだけご紹介します。


バイデンは、アメリカ上院における35年間の活動中に、多くの薬物規制強化法を制定しています。

また、大麻はゲートウェイドラッグであるとして、大麻禁止のスタンスをとっていました。

ですが、前回の2020年の大統領選挙時には、連邦法における大麻の非犯罪化を公約に掲げました。(この公約は2024年1月の時点では実現していません。)

ですが、アメリカ人の3人に2人以上(68%)が大麻の合法化を支持しているため、嗜好用大麻を禁止するスタンスのトランプに対して有権者の票を獲得する有効な手段になったと言われています。

代わりに2022年に、大麻の単純所持者約7000人に恩赦を与え釈放しました。

前述の刑務所の費用削減に加えて、有権者の人気取りという面もあったとされています。

ですが、バイデンがドラッグに寛容だったという訳ではないと思われます。

なぜなら、バイデンの息子ハンターは、長年に渡りコカイン中毒とアルコール依存症に苦しんでおり、薬物問題は非常に身近な問題だったからです。(ハンターは2019年に結婚し、家族のサポートを得て、それらのドラッグから遠ざかることが出来ました。)

フェンタニル問題について、原料が中国で生産されており、それがメキシコに密輸され、アメリカ国内で甚大な被害が発生していることについて、バイデン政権は効果的な対策をとれていないという指摘を受けています。

バイデンは、中国に対して圧力をかけフェンタニルの原料の国内生産及びメキシコへの輸出を規制させたいのですが、習近平はこれに応じるか応じないかを外交カードにしている。という報道までされています。


トランプは、前任の2018年にジェフセッションズ司法長官がコールメモ(オバマ政権時代、連邦法上は大麻の使用や販売は違法だが、州法で認められた場合、事実上黙認するように求めた通達)を撤回する通達を発出し、連邦検事に大麻に関する取締法規を適正に執行するように求めました。

メキシコの麻薬カルテルと対決姿勢を見せており、メキシコとの間に壁を作るといったのもこのような経緯があったからという面があります。

また、トランプを含む共和党の2024年大統領選候補が麻薬カルテルとの戦いとして、メキシコへの軍隊派遣やミサイル攻撃を提案しています。

ただ、米軍・政府の現・旧関係者は、このやり方では違法薬物流入を食い止められないだけでなく、米国内で流血の報復を招く可能性があるとの見方を示しています。


他の立候補者である、フロリダ州のデサンティス知事、ヘイリー元国連大使は選挙に勝利した場合、麻薬鎮痛剤「オピオイド」の一種「フェンタニル」の米国への流入を食い止めるためメキシコでの軍事力行使を承認する可能性があると述べています。


現在のバイデン政権下で毎日300名近い麻薬中毒患者が死亡するという事態が発生しているため、国民はドラッグ対策の有効的な手段を持った大統領を求めているようです。

そのため、他の候補者は軍事的な手段を使ってでもドラッグを規制するという方針を打ち出したているとされます。


これらはアメリカ大統領選挙の一つの側面でしかありませんが、ニュース報道などで見かけた場合は少し気にしてみてください。




……後書きが長くて、ゴメンナサイ。

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