知り合い?友達?
ビルを出ると道路がさらに白くなっているのが見てとれた。
先ほどよりも雪が大きくなっている気がする。
あまり寄り道などせずさっさと帰宅したいところだ。
空を見上げたアキの腕に横からマヤが抱きついた。
マヤは170近いが、アキの方が少し大きい。
「すごい雪よねぇ……どうする?そっちの坂を下って大人のホテルでいやーんな事しちゃう?」
「また今度お願いしますね。課題レポートまとめたいんです。ちょっと駅前のスーパーに寄ってから帰りますよ」
「じゃあお姉さんが奢ってあげるわ」
そっけない態度のアキにもめげず、マヤがニヤニヤしながら絡んでいる。
小一時間ほど前に歩いた通りの飲食店や居酒屋は数店を残しほとんどが店じまいをしている。
「ねえ、せっかくだから、ご飯一緒に食べていかない?どこでも良いわよ」
「ありがたいお話ですが、ジャーで炊飯のタイマー予約して来たんで大丈夫です。スーパーもカットサラダを買うだけだからわざわざ奢ってもらわなくて良いですよ」
「わたしが!お腹が!すいたの!」
「スーパーで何か買いなさいよ……」
この店はまだ営業している、この店は閉めるみたい……などと、他の店を覗きながら歩いて行く。
大手のショップは結構営業を続けるんだなぁ、なんてどうでも良いことを考えながら。
戯れ合いながら駅前まで戻ったところで、路面に面したハンバーガーショップのガラスの向こうに知った顔があることに気がついた。
「あれ?」
「ん?どうしたの?」
「多分、大学の知り合いです。ちょっと挨拶してきますね」
アキは自動ドアを通ってハンバーガーショップに入ると、窓側の客席に座りスマホを見ている女性に声をかけた。
女性はニットの上からコートを羽織っているものの、外の寒気には少々心許ない服装に見える。
「こんばんは。桂木さん。こんなところにいるなんて珍しいね」
女性は声をかけられた事に驚いて一瞬ビクッと飛び跳ねたが、相手が知人であることがわかると安堵したようだ。
「鳴海くん⁉︎びっくりした!」
「驚かせちゃった?ゴメンね。前期の講義以来だっけ?誰かと待ち合わせ?」
「ううん。バイト終わったら電車止まってて、家に連絡したけど車出せないって言われちゃって。漫画喫茶覗いたけど、もー満員で入れなくって。タクシーで帰ってこいって言われたけど、全然捕まらないし、そんなお金もなくてね……。朝までここかなぁ」
アキの後ろから顔を覗かせたマヤが声をかけた。
「だったらパパ活は?あなた可愛いしおっぱいもおっきいからすぐ捕まえられるわよ」
マヤの声に周りのサラリーマンの目がこちらを向いた。
「しません!ってどちら様でしょうか?……鳴海くんの、彼女さん、とかですか?」
「やめてくれ……。バイト先の常連さんだよ。これから家まで送ることになっててね。マヤさんも変なこと言うなよ」
「ゴメン!桂木さん?で良いのかしら?私は八乙女マヤ。せっかくだから、アキちゃんの車で一緒に帰りましょうよ。タイヤはちゃんとスタッドレスらしいわ。運転の腕は知らないけど」
マヤが社交性の高さを発揮しているが、まるでナンパしているようだ。
「初めまして。桂木ハルカです。そうしてもらえるなら助かるけど……、鳴海くん、迷惑じゃない?」
「構わないけど、桂木さんの家ってどっち方面?」
「私は桜木町の方」
「マヤさんは新川でしたっけ。ウチは道明寺だから、バラッバラだね」
「鳴海くん、やっぱり良いよ。ありがとうね」
ハルカは断ろうとしていたが、マヤがアキの首に手をかけた。
「アキちゃんはそんな薄情な子じゃないよね〜」
「ちょっとやめてって。こっちから声をかけたんだからちゃんと送るよ。桂木さんは気にしないで。そこの店で買い物してくるから……マヤさんとちょっとここで待っていて」




