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すき焼き 3

 涙を流すリカを葵が抱きしめた。


「びっくりしたよね。悲しかったよね。よく頑張ったね」


 リカは少しの時間、葵の肩に顔を埋めて泣いていた。

 葵はリカの背中をゆっくりと撫でた。



 マサムネがボソッと呟いた。

「フェンタニル、なんて聞いた事が無かった」

「ニュースで見たよ。フィラデルフィア辺りで流行った、使うとゾンビみたいになっちゃうドラッグ」

「ゾンビドラッグか…サンフランシスコがひどい状況になってるって聞いたことはあったけど、全然、遠い世界って感じだったからな…」


 リカが顔を上げた。


「葵ちゃん、ありがとう。みんな、ごめんね。ちょっとお酒が効いちゃったかも…」

「全然。むしろ、辛いことを話させちゃってごめん」


「すき焼き、食べてたらね。ミシェルが何かのマンガですき焼き食べてるの見て、食べてみたいって言ってて。日本来たら食べようって」


「思い出しちゃったかあ」


 葵がため息をついていると、アキが残っていたお肉を鍋に入れ調理して、リカのとんすいに入れた。


「リカ。ミシェルの分も食べてあげて。うちの婆ちゃんが故人を想いながら食事をすれば、その食事の内容を伝えることが出来るって言ってたから」


「うん…。ありがとう。せっかく美味しい食事なんだから、楽しまなきゃ!だね」


 リカは目尻に残った涙を拭って、お肉を口に入れた。





 少しだけ黙ったまま食事をした。

 アキは全部の食材がなくなったところで、店員を呼んだ。


「すいません。シメをお願いできますか?」


「かしこまりました。みなさん、お茶碗にご飯を少しよそってくださいね〜」


 店員は平鍋に少し残った割下に出汁を注いでレンゲでゆっくりとかき混ぜた。

 少し沸騰したところで溶き卵を流し入れ、すぐに分葱を振りかけてかき混ぜた。

 卵がふんわり、とろとろになった所で、それぞれのご飯の上に取り分けてくれた。


 違う店員が暖かいお茶を持ってきてくれた。


「どうぞ、ごゆっくり」



 四人は卵丼を次々に口に運んだ。




「「「「うっっま!!」」」」




 葵がにへらと笑った。

「ミシェルちゃんに届いてるといいねぇ」

「ゔん」

 リカも笑って応えた。

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