アメリカ 1
環境学は、大学の1年の時に受けた講義で初めて知って、興味を持ったのがきっかけだった。
担当の教授に色々聞いたんだけど、日本だとまだ歴史が浅いからアメリカの大学で勉強するのも良いよって勧められて。
私の通っている大学と提携している大学なら単位も調整してくれるから、せっかくだから行ってみよう!ってなったの。
向こうは9月に学期がスタートするから、こっちの大学は一旦休んで夏まで英会話の勉強。
で、去年の夏にアメリカに渡ったの。
まだあまり喋れなかったけどね。
向こうでは学生向けの寮を紹介してくれて、3人でルームシェアした。
ジャネルって黒人の娘とニッキーって白人の娘。
お土産に日本のお菓子をたくさん渡したらすごく喜んでくれた。
すごくハッキリものを言うコ達でね、初対面で自己紹介するなり言われたの。
「リカ、あんたの服装全然ダメ。明日一緒に買いに行くから」
「本当ね。あたしたちが見てあげるから安心して良いわ」
「え?なにか不味かった?」
「あんた、こっちで男捕まえる気?」
「ううん。特に考えてない」
「だったらお洒落なんてしなくていい」
「……変に目立つと金持ちの観光客だと思われて、強盗に遭うよ」
「ウソ……」
驚く私に色々教えてくれた。
「ジーンズにシャツ、テキストを入れるショルダーバッグで十分。靴はスニーカー」
「あと、街では基本的に他人と目を合わせちゃダメ」
「地下鉄は路線によっては危ないところもあるから、わからなかったら私たちに相談しなさい」
「なるべく地下鉄を使わないのがベストだけど、そうもいかないからねえ」
「地下鉄に乗るときはホームの端には立っちゃダメ。なるべく壁を背にしなさい」
「突き落とされるってさ」
「大声とか悲鳴がしたらすぐに逃げる」
「車両の中に人が少ない場合は乗っちゃダメ」
「ある程度人が乗ってる車両を選ぶのよ」
「携帯を見たままぼんやりしたりイヤホンつけて音楽聴いたりしてると、何かあった時に逃げられないから気をつけなさい」
「もし、落書きが多いとか道にゴミがたくさん捨てられている場所に出てしまったら、すぐに引き返しなさい」
「あと電線にスニーカーが吊るしてあったりしたらアウトね」
「なんで?」
「落書きを消す人もゴミを片付ける人もいないってことは、誰も管理してないってことだから危ないの」
「スニーカーはドラッグのバイヤーが取引の合図にしてることがあるみたい」
「えええ……」
びびる私を彼女たちは笑ったわ。
「ねえ、ニッキー」
「なに?ジャネル」
「この極東のお嬢様、どうする?」
「仕方ないから、私たちで守ってあげましょ。ハイチュウの日本限定フレーバーをたくさん持ってきてくれたし」
「そうねえ。コロロ?だったかしら。グミも美味しかったわ」
「キットカットのチーズケーキフレーバーなんて初めて食べた」
「私、ワサビフレーバーのライスクラッカー気に入ったのよ…」
「これからは、色々食べられそうね〜」
「うう……、私、お菓子のおかげでアドバイスしてもらえてる……」
肩を落とす私の背中を彼女たちは叩いて励ました。
「どっちにしろ講義が始まればそんな余裕なくなるだろうけど」
「リカの英語は下手だから他の人より大変ね!」
それからも彼女たちには色々なことを教えてもらったわ。
街の歩き方。
誰かに後をつけられていないか、定期的に後ろを振り向いて確かめる。
もしおかしな雰囲気を感じたら、ひと気の多い場所に行く。
基本的に、ひと気の少ない所を歩かない。
夜中や早朝に出歩かない。
ホームレスに物乞いされても、英語がわからないフリをしてさっさと立ち去る。
人の目に触れるところで財布を開かない。
他にもたくさん。
彼女たちは親切で、でもストレートに悪口を言うこともあって、喧嘩もしたけど、楽しかった。
彼女たちのアドバイスはとても役にたったわ。
確かに、授業が始まると忙しくてお洒落なんかしている暇なんか無かった。
それにレポートが多くて、観光に行くこともほとんどなかった。
毎日学校と寮の行き帰り。
お昼ご飯は小さいリンゴとハムとチーズのサンドイッチと魔法瓶に入れた紅茶。
夕食は、ニッキーが買ってくるピザとコーラの時もあれば、私やジャネルが作る料理の時もあった。
私の料理は、残念ながらあまり評判が良くなかったけど。
大学のカフェテリアでも食べられたけど、結構高いからあまり利用しなかった。
9月から始まった授業は苦労したけど、12月の秋学期の期末テストもなんとか乗り切った。
で、今年の1月から始まった春学期で選択した講義で、ミシェルに出会ったの。




