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Auld Lang Syne

「おや、マヤちゃんじゃないか。いらっしゃい」

 バーカウンター前のスツールに座るマヤに気づいたシュウが声をかけた。


「せっかく来てくれたのにゴメンね。今日はもう閉めるんだよ。ほら、こんな天気だしねぇ」

「えぇ……、店長までそんなこと言うの……」


 がっくりと肩を落とすマヤを尻目にアキがシュウに声をかけた。


「じゃあ後で表のプレート、クローズにして来ますね」

「うん。その洗い物終わったらアキちゃんも上がっていいよ」

「了解です。あの不良ども珍しく聞き分けましたね。どうやって追い出したんですか?」


 アキの言葉にシュウが笑った。




「いやあ、みんなで麻雀行こうって話になってさ。そこの雀荘。マヤちゃんとアキちゃんも行く?徹マンだけど」


 マヤが絶望した表情を浮かべた。


「いやよ。残業で疲れてるのにおっさん連中に付き合ってらんないわ」

「俺も急ぎのレポートあるんで、またの機会に」


 アキも断りを入れると、洗い物を終えて店の外に出ていった。





「店長〜、そんなことより私のアシちゃん、じゃなかった、アキちゃんが冷たいの。なんとか言ってよ〜」


 アキが外したのを良い事に、マヤがシュウにねだった。


「しょうがない人だね。ちゃんとお礼はしてあげてね」





 アキが戻ってきた。


「アキちゃん。悪いんだけれど、マヤさんを送ってあげて?バイト業務ってことで1時間つけとくから」

「店長、甘いっすよ……。わかりました。着替えてくるんで待っててください」


 バックヤードに姿を消したアキにマヤが上機嫌で声をかけた。


「ありがと〜。蛍の光歌って待ってるね!」




 更衣室で自前のパーカーとジーンズに着替えて靴もコンバースのオールスターに履き替えた。

 ハンガーにかけたスラックスをロッカーにしまうと、着用した前掛けとワイシャツをランドリーボックスに入れる。


 ハンガーラックに架けられたアウターの中からネイビーカラーのダウンジャケットを選び取り羽織ると、バックヤードを後にした。



「お待たせしました……って、何してるんですか?」


 マヤとシュウが何事か話し込んでいる。


「あ、蛍の光歌ってたら店長が新年の歌だから少し早いなんて言うから」

「元はスコットランドの歌で古い友人とお酒を飲んで昔のことを懐かしく話そうって歌なんだ。向こうだと1月に歌うんだよ。なんで蛍の歌になったのかは知らないけど」

「日本では年末に歌うから良いのよ!」


「どうでも良いから、帰りますよ。お疲れ様です。タイムカード退勤打ってないんで、あとよろしくお願いします」




 アキは疲れた目で2人を見たが、さっさと歩き出した。

 帰る前に常連客に軽く声をかけておく。




「お先に失礼しますね。店長麻雀弱いから、あんまりカモにしないであげてくださいね」

「おう!アキはマヤちゃんをお持ち帰りか?やるねぇ」

「勘弁してくださいよ……。じゃあ皆さんも程々に」





 マヤが慌てて追いかけてくる。


「アシちゃん!ちょっと待って!」



 アキは運転手を引き受けたことを少し後悔した。

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