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すき焼き 1

 次々に焼き鳥や煮魚が運ばれてきた。


 名物だという地鶏はしっかりとした肉質で、噛み締めると肉汁が口に広がりお酒がすすむ。

 甘辛く煮付けられた魚は、口に入れるだけでほろほろと溶けていくようだ。



「すいませ〜ん。ハイボールとレモンサワー、それと、ゆず酒の……、あ、ロック?を二つで」



 温泉の感想やリカの肌が白くてキレイだなんてことをしゃべっていると、メインのすき焼きのセットが運ばれてきた。


 薄切りにされた黒毛和牛は、赤身の肉に綺麗な白いサシが入っている。

 平皿に大きな肉がたくさん載せられていた。

 ネギ・にんじん・春菊・しいたけ・シラタキ・焼き豆腐・麩などは別皿に盛られている。

 別の店員がお櫃と茶碗を持ってきてくれた。



 ガスコンロをセットし、平鍋を火にかけて温める。

 最初は店員がその場で調理してくれるとのことで、コンロの上で熱した平鍋に牛脂を塗っている。



「みなさん、卵を溶いておいてくださいね。それと、ご飯を召し上がる方はいらっしゃいますか?…みなさん召し上がるんですねぇ。お若いからたくさん食べていってくださいね」


 全員一致で手が上がったことに笑みをこぼした店員が茶碗にご飯をよそってくれた。

 四人は配られた卵を取り、とんすい(小鉢)に割り入れ溶き始めた。



「こういうサービスってすごく素敵だよね〜」

「なんかこう…、日本に帰ってきたって気がする」

「帰ってきた?」

「うん。あ、後でね」



 葵とリカが話している。


 鍋底がうっすら隠れるくらいの量の割下を入れ、煮立ったところでお肉を入れた。

 大きい鍋だが、お肉が大きいので一度に入るのは2枚がやっとのところ。

 鍋に入れたお肉を菜箸で丁寧に広げていく。

 30秒ほどでひっくり返し数秒だけ待って、葵のとんすいに最初のお肉を入れてくれた。

 程なくして出来上がった次のお肉はリカのとんすいによそわれた。


「どうぞ、出来立てを召し上がってくださいね」


 店員の言葉にアキとマサムネも笑って頷いたので、二人はお肉を口にした。



 二人の表情が溶けた。



「あぁ……、お肉が、溶ける……」

「おいひぃ……」



 次にお肉を頬張ったマサムネは、何も言わずご飯をガツガツと食べ始めた。

 アキも溶き卵の中に注いでもらったお肉を口にした。


 旨味の強い赤身と脂肪の甘みが溶き卵と一緒になって、噛み締めるたびに口の中が幸せになる。


「本当に、美味いなあ」


 思わず声が出た。


 全員にお肉が行きわたったところで、店員は平鍋に追加の割下を注ぎ入れた。

 割下が少し沸騰したところで、ネギやにんじん、椎茸や豆腐などの別皿の具材を煮込む。


「先に一度お肉を焼くと出汁が出ますからねえ。他の具材も美味しくいただけるんですよ」


 ある程度煮込み、具材を四人に取り分けてくれた。


「残りのお肉はみなさんでお楽しみください。最後に具材がなくなりましたらお声がけください。それとご飯は少しだけ残しておいてくださいね」

「ありがとうございます。後でまたお願いします。あ、それと何かオススメの地酒があれば、冷やで一合頂けますか?」

「かしこまりした。お猪口はおいくつお持ちしますか?」

「4つで」


 アキが店員と話している間に、早速マサムネが鍋の空きスペースにお肉を入れている。


「一人4枚だから、間違えないでね!」

「大丈夫だって!この肉は俺が育てる!」


 葵とマサムネが何か争っている。


 アキは目の前で焼き豆腐に挑むリカに目を向けた。

 猫舌のようで熱い豆腐に苦労しているようだ。


「リカは豆腐苦手だった?」

「ううん。美味しいよ。向こうだと美味しい豆腐ってなかなか無かったから」

「あ、そうだ。リカちゃん、日本に帰ってきたって何?」


 マサムネと肉をめぐる戦いを繰り広げていた葵が尋ねた。

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