ちょっとした考察
外に出ると、雪の降り方が先ほどより多くなっていた。
カーナビにホテルの住所をセットすると、現在地から20分程度と案内された。
見送りに出てくれたおばさまに挨拶し、木梨家を後にする。
すっかり暗くなっていたが、道は街灯が明るく照らしていた。
車の照明をロウビームに切り替えて、対向車に注意しながら走っていく。
交通量は結構多い。
「なかなか興味深い話でしたね」
アキが話し始めると、葵とマサムネも続いた。
「あの婆ちゃん、色々とすげえな。まあ、途中で戦争の話になった時はどうなるかと思ったけど」
「猟師と蛇の夫婦が可哀想でした……。でも毛むくじゃらの話はマジでムリです……」
教授が笑う。
「まあ毛むくじゃらの話は置いておいて、異類婚姻譚のお話だったねえ。世界的にも珍しい部類ではないんだけど、日本では特に多い話だ」
「そうなんスか?」
「うむ。だからこそ、日本人は色々なものを擬人化させてキャラクターにすることに抵抗感がないのかもしれないねえ。アニメなんかも世界から見ると独特の感性だと言われることがある」
「刀剣乱舞とかも擬人化っちゃあそうっすね。もう生き物ですらないし」
「先ほどの蛇の話は西日本に類似した説話があったと思う。どこかで混ざっているのだろうねえ」
「え?じゃあ丸っ切りこのあたりの話じゃないってことですか?」
「いや、そうじゃないよ。重要な点は、いくつかあるんだ。いくつかポイントにまとめてみよう。
まずは、この地方に旱魃などによる災害で飢饉が発生したことがある。という点だ。
次に、その飢饉は1度だけではなく、短い間隔で複数回発生した。
最後に、山に近い一つの集落が、冬場に発生した何らかの災害で壊滅的な被害を受けた。という事になるね」
「まあ、そうですね」
「それで気になる点がいくつかある。
消えた女の所在。
口減らしとして集落を追放されたのか、それとも……。
何せ、目玉を舐めて飢えを凌いでいたくらいだ」
「先生、この後ご飯食べられなくなるから、やめてくださいよ〜」
民家や商店が増えてきたが、ほとんどの店はシャッターが降りているか閉店作業をしているようだ。
「おお、すまん。
では次に、タエさんが言っていた沼の場所と災害にあった里の場所。
里の跡地に沼が出来た、と言っていたね。
土砂災害や雪崩れに里が飲まれたのであれば、山の麓のはずだ。
けれど、タエさんは山の中腹にある沼の話と言っていた。
地下から中腹は何とも厳しい」
「そうかもしれませんね」
「地響きと共に里が飲まれた。と言っていたが、大規模な地震が発生した、と言う可能性が考えられる。
雪崩に飲み込まれたのではなく、地面が隆起したのではないだろうか?
活断層やプレートがあのあたりにあるかも知れないよ。
もちろん規模にもよるが、プレートの境界部に近いと地震で地形が変化することがあると聞く」
「じゃあ最後に出てきた蛇は何だったんですか?」
「地震によって地形が変化した結果、植生や生態系も変化し、それまでいなかった蛇の種類が大量発生した。と言うのはどうかね」
飲食チェーン店や居酒屋などの飲み屋が増えてきた。
赤提灯が下がっているのが見える。
だが、雪ということもあり、歩いている人は見当たらない。
「まとめると、食糧は大事にしよう。仲間外れや迫害をするのはいけません。あそこの山の近くは地震の時に危ないから住んじゃダメって感じですか」
「鳴海くんは面白いねえ」
「そうですか?あ、ホテルって、あそこのビジネスホテルで良いですか?」
1棟のホテルが見えてきた。
ホテルの次のブロックには旅館も見える。
「うむ。…旅館の方は満室で予約が取れなくてね。だが温泉はホテルが送迎を出してくれるから、心配せんでも大丈夫だ」
「晩飯どうするんスか?」
「遅くまでやっている美味しい店があってな。心配せんでも、もう予約してある。まずはチェックインして準備をすませたらロビーに集合してくれ。食事の前に温泉に行こう」




