もう少し
幸い雪はそれほど強くならず、チェーン規制に引っかかることなく高速道路を降りることができた。
一般道に降りても四車線ある国道は除雪されており、運転に不安を覚えることもない。
高速道路の出口から市街地を抜け、田園地帯に差し掛かると田畑が真っ白に染まっていた。
だんだんと車線が少なくなり、交通量も少なくなってきて、代わりに道路上の積雪が増えてきた。
目的地はこの先の山道を登った先にある集落だ。
温泉の規模は小さいものの、ホテルが2軒と旅館が1軒あるらしい。
ガソリンメーターはまだ半分以上残っているものの、給油はできる時にしておくべきか。
少し走るとコンビニを併設したガソリンスタンドがあった。
スタンドの3番に停車しセルフで給油していると、マサムネと葵が車から出てきた。
ようやく起きたらしい。
「お疲れ〜」
「うわぁさむ〜」
「おはようさん。よく寝れたか?」
「いやあ、悪りぃ。寝ちまった。葵がさ〜さっさと寝落ちするから〜」
「人のせいにしないでよね。ごめんね、ついうとうとしちゃった……。秋人くん、あとどれくらいなの?」
給油ノズルから出ていたガソリンが止まった。
満タンになったようだ。
ノズルを元の位置に戻し、給油キャップを閉めてからカッバーを閉じた。
「30分もかからないかな。コンビニあるから行って来たら?教授も起こしておくから」
「じゃあ行ってくるわ」
「私も〜」
ガソリンスタンドの事務所のカウンターに行きスタッフに3番で給油したことを告げる。
代金を現金で支払い、釣り銭とレシートを受け取る。
ふと気になりスタッフに声をかけた。
「こんにちは。これから黄走りの方に行くんですが、雪ってすごいですか?」
「あぁ、あっちに行くのかい?この辺りは先々週くらいから雪が結構降ったからねぇ。早めに除雪車出してるから大体の道は大丈夫だよ」
「そうですか。じゃあ問題なさそうですかね」
「ただ、ちょっと山の方に行くと一気に街頭がなくなって真っ暗になるから危ないよ。去年も夜中に山の温泉に行った観光客が、雪で車線を見間違えて田んぼに落っこちるなんて事故もあったから」
「確かに道を知らないと危険ですよね。ありがとうございます。気をつけます」
「泉質は良いから、楽しんでな〜」
スタッフに軽く頭を下げて事務所を出た。
車に戻ると教授はもう起きていた。
スマホを耳にあてて誰かと通話している。
「……ええ。予定よりも早く着きそうでしてね。あ、ちょっとお待ちください」
教授はスマホから顔を離すとアキに尋ねた。
「鳴海くん。あとどのくらいかかりそうかね?」
「1軒目のお宅でしたら20分もかからないと思いますが、先にホテルのチェックインをするのでは?」
「いや、予定を前倒しさせていただこう。ホテルは後だ。」
再度スマホの向こうの誰かと話始めた。
「すいません。お待たせしました。30分くらいしましたらお伺いさせていただきます。……ええ。ではまた後ほど」
通話を終了した教授がほっと息をついた。
「すまんが先に、うん、そう、このお宅に行ってくれ。2人はコンビニか?私も手洗いに行ってこようかな」
「コンビニの駐車場に車を動かします」
すぐ横のコンビニに車を移動させると、教授が車を降りて背伸びをした。
雪除けのため自動ドアの外に設置された風除室の引き戸を開けてコンビニに入っていく。
アキも教授の後に続いて入店した。
「あ、秋人。なんか飲む?」
「いや、いいや。ちょっとトイレ行ってくるから店内にいて」
トイレの利用者も多いのだろう。男性用・女性用と並び男女共用の3つのドアが並んでいた。
用を足して出てくると、レジ前でマサムネが何か悩んでいる。葵と教授も一緒にいるようだ。
「やっぱり肉まんかな…。お、秋人はどうする?」
「じゃあピザまんで」
「私もピザまん!」
「私はあんまんを食べようかなあ。加藤くん、ご馳走様」
「先生もですか⁉︎」
「誰かがテキストが気に食わないとかなんとか…」
「あー!店員さん!すいません!肉まん1個とピザまん2個とあんまん1個お願いします!」
最近は肉まんも結構いい値段するんだよなあ…などと呟くマサムネ奢りの中華まんは、いつもより美味しく感じた。




