大学へ
「今回いく場所が駅から遠くて交通の便が悪いらしいんですよ。今日が1軒で、明日が3軒かな?色々回りたいらしいんです。タクシーだと小回りが利かないし、レンタカー借りても免許持ちのスケジュールが合わない。学生にバイト代出した方が楽って事みたいです」
「コマ教授って免許持ってなかったんだ」
「運転、苦手みたい。ペーパーって話」
「まあ、苦手な人が運転して事故るよりは良いのかな?」
「そうだね……、って、駅着いたよ。忘れ物ないようにね」
取り止めのない話をしている内に、昨夜ハルカを拾った駅の北口側のロータリーに到着した。
「鳴海くん、本当にありがとうございました。今度お礼させてね。連絡先、前のままで大丈夫?」
「ああ、変わってない。でも、そんなに気にしないで良いから。また過去問でも回してくれれば助かるよ」
「了解しました!でも、今度はご飯とか行こうね!」
左側に座っていたハルカが車を降りて行った。
「アキちゃん。ありがとね。えっと、うん。泊めてくれて嬉しかった」
「いつでもって訳にはいきませんが、困った時くらいは」
「アキちゃんの連絡先、もらって良い?」
「そういえば、マヤさんの知りませんでした」
2人でスマホを取り出し、連絡先を交換しあう。
「……お礼、ちゃんとするから。連絡するわね」
「…期待しないで待ってます」
マヤはそそくさと車を降りた。
アキが車を出す。
2人が雪が積もったロータリーからアキに手を振っていた。
「マーヤーさん!鳴海くんとデートの約束出来ました?」
「してないわよ!」
「でも、なんかぁ顔近づけてやらしぃ感じでしたよぉ」
「連絡先を交換してただけ。今度お礼もしたいし」
「あ、マヤさんの連絡先、私も知りたいです!」
「そうね!私もハルカちゃんと仲良くなりたいわ!ね、ちょっとそこの店でお茶して行かない?」
「良いですね!だったら、この店よりも南口の方に良い喫茶店が……」
2人は連れ立って駅へと歩き出した。
アキが大学の裏手の職員用駐車場ゲートに到着したのは、10時20分のことだった。
ゲート横の保安室にいた警備員に声をかけた。
「お疲れ様でーす。小松原教授から14番使えって言われてるんですが、入っても大丈夫ですか?」
「こんにちは。一応学生証見せてくれる?………うん。大丈夫。連絡聞いてるよ。まだ雪が残ってるから気をつけてね」
警備員に通された先には広い駐車場があった。
降雪の翌日の土曜日ということもあり、駐車している車両は少ない。
もしかしたら仕事がある人も電車に切り替えたのかもしれない。
そんなことを考えながら、14番に車を停めた。
助手席に置いておいたダウンを着込むと、トートバッグを手にして車を出る。
一昨年建て替えられたばかりでまだ真新しい教授棟が目に入った。
アキは白い息を吐き出すと、そちらへと向かって歩き始めた。
まずは梅田教授のところに行かなくてはならない。




