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出発

 大きな窓から外の景色を眺めると、街を遠くまで見渡すことができた。

 住宅の屋根の上には白い雪が積もり、陽の光をキラキラと反射させている。

 雪は降り止んでおり、澄んだ青空に太陽が昇っていた。


「晴れたのねぇ」

「でも、寒そうですね」


 道路はと見るとそれなりに車通りもあるので、路面凍結の恐れは少なそうだ。


「結構高いフロアだったんだね〜」

「そうですね…何階でしたっけ」

「16階?いや17階だっけ」


 食器を回収したアキが洗い物をしている間、マヤとハルカは外を眺めていた。

 手伝いも申し出たが、あっさり却下された。


「家具も結構良いものが揃ってる気がするし、お家賃も結構なお値段よねぇ」

「ですねぇ。そんなお金持ちってイメージなかったからびっくりしてます」

「良いとこのボンボンなのかしら……」



 一度寝室に引っ込んでいたアキが大きいサイズの黒のレザートートバッグとネイビーのダウンジャケットを手にリビングに出てきた。

 ふと何かに気づくとテーブルに荷物を置き、キッチンの冷蔵庫から何か持ってきて2人に見せた。


「あ、これ」

「昨日の?」


「そうそう。これが昨日の晩飯ね」


 黄色地に黒字で『スパイシーカレーチキンレッグ』と書かれた下に盛り付けられたチキンカレーの写真が印刷されている。


「業務スーパーで売ってるカレーで、冷蔵の商品なんだよね。レトルトと違って常温保存できないし、賞味期限も2ヶ月くらいかな?短めだけど。美味いから結構好きなんだよね」


「そうなのね。業務スーパーはあまり行ったことがないから見たことがなかったわ」

「あ、1つのパックにチキンレッグが2本入っているんですね。…結構お高い感じでした?」


「そりゃボンカレーとかに比べれば高いけど、400円もしないかな。2人前って考えれば悪くないよ」


 パッケージの裏側を眺めながら、マヤが大きなため息をついた。


「とりあえず、アキちゃんがカレー男子じゃないことはわかったわ。でもこういう時に男性から手料理でアピールされたらコロッといくかもよ?私とか!」

「あ、良いですね。イケメンで料理上手の彼氏とか!」


「あんたらな……。タダ飯くっといてよく言うよ。少しは料理もやるけど基本は手抜き。野郎の一人暮らしに変な幻想を持たないでくれ……」

 マヤの手からカレーを取り上げると冷蔵庫にしまった。

 壁の時計を見るともう9時半だ。


「そろそろ時間だ。忘れ物、ないよね?」



「ちょっと待って」というハルカが手洗いに行っている間に、客間に荷物を取りに行ったマヤがリビングに戻ってきた。

 ハルカのバッグも持ってきたようだ。

 自分のバッグの中から、何か取り出した。



「ベッドの下にピアスとか置いといてあげようか?」

「変な悪戯したらぶっ飛ばすから。ぐーで行くからね、ぐーで」


 嫌そうにするアキに近づいたマヤが笑っている。

「え〜。でも、今度なんかお礼するから」




 ニヤニヤするマヤをアキが軽くハグして、耳元で囁いた。


「じゃあ、楽しみにしてるね。マヤさんの大人の夜を。今度は、ふたりきりの時に、ね」





 不意のカウンターを食らったマヤが固まった。


 アキはハグをやめてダウンジャケットを羽織るとバッグを肩にかけて玄関へと歩いていった。





 リビングで固まっているマヤに、戻ってきたハルカが声をかけた。

「お待たせしました!帰りましょう!」




 ぼんやりしているマヤの手をハルカが引っ張った。


 アキは玄関でブーツを履いている。



「さあ、出るよ。駅まで送る」

寒い日に業スーのカレーを食べてて、この3人が食べてる風景が思い浮かんだので。

料理上手なイケメンは世の中にはいるんだろうけど、知り合いにはいない。


このカレーは結構オススメ。

うまーです。

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