初雪
空から羽毛のように舞い降りる雪が、色鮮やかなネオンに彩られた街を真っ白に塗り変えていく。
週末の金曜日ということで普段は多くの人で賑わう駅前の大通りも今夜は人影がまばらで、タクシー乗り場だけが混雑している。
今朝の天気予報では知らされなかった突然の大雪は、街に若干の混乱をもたらしていた。
客足の少なさに今日の営業を諦めたのか、いくつかの店は早々にシャッターを下ろしている。
深夜まで営業することを売りにしている駅前の酒屋から、グレーのマスクをつけた青年が出てきた。
大きなショッピングバッグの紐がダウンの肩に食い込んでいる。
結構な重量がかかっているようだ。
「うわぁ…めっちゃ降ってる…」
降り続く雪と空気の冷たさに顔を顰めた青年は、白いダウンジャケットのジッパーを首元まで引き上げて歩き出した。
革靴のため転倒しないように注意しているのかゆっくりとした足取りだ。
駅の北側、飲食店や居酒屋が立ち並ぶ通りを10分ほど進み、ゲームセンターとパチンコ屋の間の路地を右に曲がる。
ホストクラブやキャバクラ、風俗店案内所といった店舗が間近になってきた。
歓楽街が近く、その先の坂を降ればラブホテルが立ち並んでいる。
こんな天候だというのに数人の客引きが道ゆくサラリーマンに何事か話しかけている。
それを横目に見つつ一棟のビルに入った。
ちょうど1階に停まっていたエレベーター乗り込むと、7階のボタンを押す。
青年が辿り着いたのは、【Billiards & Bar Q】という看板が架けられたドアだった。
「OPEN」と書かれたプレートが揺れている。
重みのあるドアをゆっくりと引き開けると、暖かい空気が青年を包んだ。
ドアの向こうに十数台のビリヤード台とその奥のバーカウンターが見えた。
ビリヤード台の上から吊り下げられたペンダントライトが緑色の羅紗を明るく照らす一方で、店内は暗めで落ち着いた雰囲気を感じさせる。
所々に設置された間接照明が足元を照らしている。
そんな中、4〜5人の客がキューを手に台を囲んでいる。
酒が入っているのか時折笑い声が響いている。
バーカウンターの中でグラスを磨いていた男性が、青年に声をかけた。
「アキちゃん、おかえり。寒い中買い出しありがとう。頭、雪積もってるよ」
青年はカウンターにショッピングバッグをゆっくりと置く中から数本の酒瓶を取り出して、大きく息を吐いた。
髪の毛についた雪を払い落とすと、ダウンジャケットのポケットから封筒と一枚の紙を取り出した。
「ただいま戻りました。これレシートとお釣りです。店長、ヤバいっす。めっちゃ雪降ってます」
なんだか急に寒くなったので、ちょっとだけ書いてみました。




