「魔物除けのアイテムだから大人になるまでずっと持ってろよ」って幼馴染から貰ったお守りの中身を覗いてみたら、おふだかと思いきや婚姻届だった件
なろうラジオ大賞4参加作品のため文字数1000文字の超短編です。使用ワード「おふだ」
「魔物除けのアイテムだから大人になるまでずっと持ってろよ」
幼馴染のフィンから手のひらに収まる大きさの布に包まれたお守りを貰ったのは14歳の時のこと。
この国に魔物なんて出たことあったかしら? なんて疑問はあったけど、気にせずに受け取ってから、はや4年。
私、リリーは成人として認められる18歳になった。片田舎のこの街で、実家の花屋の手伝いをしている。
同じ年の幼馴染であるフィンはというと、お守りをくれた年に、最難関だといわれている王都騎士団に見事合格し、王都にある共同宿舎へと居住を移した。
この街には年に1回だけしか帰って来れないみたい。
会う度に背が高くなって、顔立ちも体つきも精悍で男らしくなるフィン。
遠い世界の人になっていく感覚がして、何だか少し寂しい。
ある時、もう1年も顔を見ていないフィンの姿を想像しながらお守りを眺めていた。
ふと好奇心にかられ、中身を覗いてみることにした。
お守りにしては分厚いし、何が入っているんだろうと前から不思議に思っていたのだ。
フィンは大人になるまで持ってろって言ってたけど、もう18歳になったし、問題ないよね?
中には細かく折り畳まれた紙が1枚入っている。おふだかしら。魔物除けの呪文とか書かれているのかな?
取り出して広げてみると、婚姻届だった。
しかも中身はきっちりと記入済み。
あとは私がサインして大聖堂まで持って行き、受理されれば婚姻成立だ。
混乱しながらも、確かこの国の婚姻届には証人として2名分のサインが必要なんだけど一体誰が書いたんだろうって見てみたら、私の両親の名があった。え、いつの間に……?
お守りを手放したことなんてないから、4年前には書いてたってこと……?
怖い、怖過ぎる……。
外堀を埋められていた事実に啞然としていると、後ろから声が掛けられた。
「名前、書いた?」
「……フィ、フィン!! 帰って来てたの!? あの、こ、これって」
「見ればわかるだろ? 後はリリーの名前だけだから。早く書いて一緒に届けに行こう」
「ま、待ってよ。私にも考える時間が……」
「大聖堂までゆっくり歩いて1時間ってとこか。じゃ、ゆっくり考えながら、サインして」
「はい?」
片手を握られてしまい、大聖堂の方角へとフィンが歩き始める。
フィンが強く握り締める手とは反対側の手で婚姻届を持ちながら、私は決意を固めた。
まずはお説教をするところから始めなくてはいけなさそうだ。
プロポーズくらいちゃんとしてよね!!