婚約しました
更新します。
若人の恋愛模様って、はるか昔過ぎて想像するしかありません。年代的にはお冨の孫でもおかしくないもんなぁ(笑)
バルトコル伯爵家は、当主とお嬢様のお二人きり。伯爵御本人も一人っ子で、御兄弟はいない。更に先代様までが一人っ子だった。
結果、バルトコル伯爵家は極端に親族が少ない。いくつかある従属爵位はほとんどが当主が掛け持ちしていて、分家は二つしか残っていない。血筋的には遠縁もいいところだ。
あまり大きな声では言えないけれど、王家や公爵家と縁を結ぶのは博打だ。
名誉なことだし、王国中枢に確かなコネクションを持てるが、少子化待った無し。高貴な姫君は庶民と違って、バンバン赤ん坊を産んだりしない。いやできない。
なのになぜ、バルトコル伯爵家は二代続けて博打を打ったんだろう。僕が考える事じゃ無いんだけどさ。
とにかく高貴な血筋のお嬢様は、次代の伯爵家当主に確定している。家督を継いで、女伯爵を名乗られる方だ。
バルトコル伯爵家は国境の守り、他国の辺境伯並みの家格を持つ。領地は広いし、土地は肥沃。隣国のトマーニケ帝国との交易が盛んで、家格に見合った裕福さだ。
婿の成手は選び放題だろうに、何で僕。男爵家次男と伯爵家の総領娘じゃ、全然釣り合いませんが。
「他家から婿を取れば、婿の生家の影響力が強くなりすぎるのだよ。親族が少ないのは弱味になる。対抗しきれぬ。それに、娘は病弱だ。いざとなれば、婿に第二夫人をあてがって後継者を得なければならぬ。ならばバルトコルの血を絶やさぬため、血縁者を婿に迎えるしか無かろう」
はい、バリバリの政略結婚でした。
ちなみにもう一つの分家には年の釣り合う未婚男子が居ないそうで、候補は僕だけだそうです。
正直に言うと、物凄く嬉しかった。初恋のお嬢様と結婚できるんだ。
だけど、お嬢様はどうだろう。
お体が弱くて王都の貴族学園へ行くことができなかったお嬢様。もし進学されていたら、御身分に見合う貴公子と親交を深められただろう。
あそこには、僕なんて足元にも及ばない優秀で高貴な方々が幾らでもいらっしゃった。
僕は運が良くて選ばれただけだ。そこにお嬢様の意志は一かけらも無い。僕なんかが婿じゃ、ガッカリされてるんじゃあ。
いやいや、お嬢様とは幼馴染だ。お見舞いに行くたび、可愛く笑って下さったじゃないか。僕は嫌われてない筈。
いや、でも……。
ぐるぐる考えながら、お嬢様と顔合わせをした。
幼いころはお嬢様の私室に通されていたけど、学園を卒業して成人したからには、そんな無礼は許されない。私室近くのサロンに足を踏み入れて、僕は硬直した。
しばらく見ない間に、お嬢様は少女から女性に成長されていた。うら若き美貌、にじみ出る気品。
何を言えば良いか、全然浮かんでこない。緊張して、気の利いた誉め言葉一つ言えないなかった。ただ見惚れているだけなんて、なんて僕は情けないんだ。
なんとか絞り出した言葉は。
「今度、婚約者に成りました。よろしくお願いします」
ああ、馬鹿馬鹿、僕の馬鹿。事務連絡じゃ無いのに。
「カレスン様は、わたくしの事、お嫌いでしょうね」
久しぶりにお会いしたカレスンお兄様は、背も伸びて素敵な男性になっていらした。
でも、昔のようには笑いかけて下さらなかった。
そうよね。こんなに体が弱くて役立たずのわたくしを押し付けられたんですもの。
「お嬢様、そんなことは」
「良いの。分かっていますわ。お父様がお決めになった事、カレスン様は断れませんわ。本当に申し訳ないのに」
嬉しいと思ってしまう。形だけでも、お兄様の妻に成れるんですもの。
愛して欲しいなんて贅沢は言わない。ずっと生涯を共にして欲しい。それがわたくしの願い。
慣れないラブストーリーを必死こいて書きました。キーワードのすれ違いと両片思い、これであってますよね(;^_^A
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