兄が男爵になりました
はいっ。あの、PV137って、何事でしょうか。
第一話、本当にちょろっとしか書いてなくて、シリーズ設定するためだけに書いたようなものなんですけど。
これはヤバい。きちんと続きを書かねば。
大慌てで現状説明書きました。視点は、カレスン卿の回想です。
いろいろな思惑が絡んでいるんでしょうけど、さて、どう話が転がるか。書きながらお冨も楽しみにしています。
私には、十歳上の兄がいる。
これだけ齢が離れていると、幼いころに一緒に遊んだ記憶が無い。有るのは、たまに子守りしてもらった記憶だけだ。
物心がついたころには、兄は王都の貴族学園へ入学していた。学園は全寮制で、長期の休みにしか戻ってこれない。それも往復に時間を取られるから、家に居られるのはほんの数日。
忙しくて、私の相手をまともにしていられなかったのだと、今なら解る。
それが当たり前だったから、私は別に寂しいとは思わなかった。二人きりの兄弟だと言うのに、薄情なものだ。
私の興味は、たまにしか顔を合わせない兄より、本家のお嬢様に向いていた。母に連れられてご機嫌伺いするたびに、ワクワクして待ちきれない思いをしていた。
本家は、バルトコル伯爵。デルスパニア王国の東の端に位置している。他国でなら辺境伯と呼ばれる立場だ。伯爵家の中では最も格が高く、度々公爵家や侯爵家と縁を結んできた。
今代の当主様は公爵令嬢を母に持ち、王弟殿下の姫君、国王陛下の姪を妻に迎えている。
順風満帆、と言いたいところだが、伯爵夫人はお嬢様をお産みになったことで命を落とされた。元々お体が弱かったらしい。
口さがない噂は、子供の私の耳にも聞こえてきた。
……王家は高貴な血が濃くなりすぎて、使い物にならない女性を厄介払いで地方に下げ渡している。
……生まれたお嬢様も病弱で、とても他所に輿入れできない。
……王家の血の濃いお嬢様を差し置いて、他の子供に家督を譲る訳にはいかないから、伯爵は再婚できずにいる。
……バルトコル伯爵の血縁の婿を取り、婿の血筋で家を保つらしい。
……婿になる男は幸運だ。お飾りの妻を置いておけば、伯爵家の実権を握って、好きなだけ女を侍らせられる。良いご身分だな。
何てこと言うんだ。お嬢様はお飾りなんかじゃない。いつもニコニコ笑っていて、とっても可愛いのに。風邪をひいてお熱が有ったりするけど、それは子供なら当たり前じゃないか。
後で知ったことだが、お嬢様には専属の医師団が付いていた。摂取する食事も休憩時間も厳密に計算されていて、そこから逸脱できなかったのだとか。
そうして体調のピークに合わせて、私は母と共に呼ばれていたのだった。
お嬢様にとって、私の訪問は、頑張ったご褒美だった。心待ちにしていたからこその笑顔だった。
だから私は、お嬢様の普段の顔を知らなかった。
熱に浮かされた辛い顔も、辛くて泣きそうな顔も、もう嫌と癇癪を起す顔も、私は知らなかったのだ。
兄が二十歳を過ぎ、義姉が嫁いで来ると、父は引退を言い出した。
我がランデス男爵家は、バルトコル伯爵家の従属貴族だ。国王直々に叙爵する直参貴族とは違って、バルトコル伯爵家当主の意向でどうとでもなってしまう。機嫌を損ねることはできない。
手続き上、引退する父は一度伯爵家に男爵位を返上する。伯爵家当主は従属爵位を自身で掛け持ちして良いし、改めて下賜して良い。人選は御当主の胸先三寸だ。
もちろん、父は兄を後継者として推薦した。
世襲は慣例であり、法律上の強制力はないが、よほどの理由が無い限りそのまま通る。慣例とはそういうものだ。兄は晴れてランデス男爵になった。
兄に後継者が生まれるまでは、次男の私は兄のスペアとして男爵家に残るのが慣例だ。十五歳になって、これまた慣例に従い、王都の貴族学園へ進学した。
お嬢様に会えない日々は味気なかったが、それなりに学生時代を謳歌し、貴族としての人脈作りに励んだ。
ようやく卒業を迎え、故郷に帰ってきたら、私に縁談が来た。
伯爵家への婿入りという、血筋を守るための政略結婚だった。
昨日、コロナワクチン打ってきました。腕は痛いわ、熱がこもってるわ、体はだるいわ。
無理ないペースで頑張ります。
お星さまとブックマーク、ありがとうございました。あの超短い文章で総合ポイント14って、身に余る光栄です。期待に応えたいです。
ああー、だるー(笑)