地球技術国家、今までとは違うやり方をやってみる
秋水大帝国 ミカヅキ 総統官邸
コンコン
ドアを何者かがノックした。
「入れ」
ガチャ
寒涼の自室に入ってきたのは紛れもなく、報告員であった。
「今回はどのような報告だ?」
寒涼は頬杖をつきながら言った。
「藍那海沖でゴルゾン帝国なる国籍の海軍の艦隊と臨検しようとした海上保安局第3警備隊が戦闘になりました。しかし、海上保安局側の被害は無く、ゴルゾン帝国海軍艦隊は殲滅。全艦撃沈しました」
普通であれば驚く筈なのだが、寒涼は余り興味を示さない。
「で、ゴルゾン帝国は何故、我が領海に入ったのか?」
「それは、ゴルゾン帝国が我が国が国交締結したショックシーカー帝国に侵攻する為だと捕虜への精神的尋問により、判明致しました」
寒涼は『精神的尋問』という言葉に一瞬、顔を歪めたが直ぐに元の顔に戻る。
「そうか、こうなると2日前のショックシーカー帝国を中心としたマクロビア同盟とゴルゾン帝国が争っている構造か…」
「ええ、そうであります。ゴルゾン帝国は植民地欲しさに侵略を繰り返していることが諜報局による調査で判明しています。その為、ゴルゾン帝国は帝国軍、マクロビア同盟は反乱軍と言ったところでしょうか」
報告員は寒涼が好きな映画で例える。
「分かりやすい説明だな。そうすれば、直ちにマクロビア同盟加入国との国交及び友好、不可侵などの条約を結び、軍事支援に協力すると伝えろ。もし、これらが完了すれば、マクロビア湾に停泊している愚連艦隊を攻撃に回せ」
「ハッ、ですが何故愚連艦隊を攻撃に回すのですか?」
報告員は疑問を口にする。
「わかるだろう。愚連艦隊は戦艦を編成している。戦艦を編成しているのは愚連艦隊だけだ。元々、戦艦自体は金食い虫であったが、それは通常動力であったことと人員が多かったことだ。しかし、現在は原子炉への換装と人員の削減でミサイルを沢山撃つよりも安上がり。そして、射程も長いことから、深い内陸部では使えないが、最新射撃機器の搭載で射程も伸び、精度も上がっていると聞く。そうであれば、愚連艦隊を攻撃に回した方が良いということだ。分かったか?」
「はい、そういう理由だったのですね…」
報告員はそういうことかと納得した様子だった。
「ということだ。もう、下がっていいぞ」
「ハッ、では失礼いたします」
ガチャ
バタン
報告員は寒涼の自室から去っていった。
「ふぅ…、こんなに喋ったのはいつ頃かな…」
寒涼は小さい声で独り言を言った。
「…ッ!…はぁ…、また無意識に昔のことを思い出そうとしていた…。私も老いたものだな」
寒涼はそういうとガハハハッと豪快に笑った。
ゴルゾン帝国 第1帝王宮殿
「もう一度言ってくれ」
メルケスは報告に来たコルテス軍務大臣の報告を聞き返した。
「え…ええと…第2艦隊と通信が途絶しました…」
「原因は?」
「げ、原因…ですか?…えーと…そ、それ」
「わからないという事か?」
メルケスはコルテスに言い詰める。
「どう言う事なのだ。コルテス軍務大臣ッ!」
「は、はい…、そ、ほれは…も」
「何も言えないということは糞みたいなマクロビア同盟軍に第2艦隊が敗れたと言うことなッのッかッ!?」
メルケスはさらに言い詰めた。
「そ、それは…、し、しかし…偵察隊を…第2艦隊の.通過地点に派遣したところ…通信が途切れまし…て…」
「偵察隊もやられたと言うことなのか?」
メルケスは先程と打って変わって、口調が変わる。
「そ、そう言うことでありま」
「衛兵、こいつを連れて行け」
「ハッ!」
メルケスの言葉により、衛兵がコルテスの手首をロープでぎっちりと結び、暴れるコルテスを羽交い締めにする。
「へ、陛下…!こ、これはどうい」
「貴様は更迭…いや、処刑か」
「な、何故!?わ、私は職務を全うしただ…けで」
「言い訳はいらん。第2艦隊と偵察隊がやられたのは貴様の手腕が悪いのだ。貴様のその悪い手腕で本来であれば制圧できた筈のショックシーカー帝国侵攻作戦に暗雲が立ち込めた。これは、重大なことだぞ」
「し、しかし…」
「まだ、言い訳をするのか。見苦しいものだ」
すると、メルケスは遊戯用の短剣を取り出し、コルテスに歩み寄る。
「衛兵、そのままだ」
メルケスは衛兵を止めるとコルテスの首に短剣を刺した。
「うぐぅ…ッ」
鮮血が噴き出し、豪華なカーペットを汚していく。
「ん?骨が邪魔して貫通せんな」
メルケスはそう言うとグリグリと首を抉っていく。
「うが…ぎ…ぎが…」
コルテスは痛みに悶える。
「よぉし、ここかぁ!」
メルケスは短剣を骨から通過させると、残りの筋肉を断絶させる。
コルテスはもう、出血多量と出血性ショックで亡くなっており、体はクタッと衛兵にもたれかかっていた。
スパッ
首を切り落とし、スパッという空を斬る音が響いた。
第6兵舎
ここは、第1帝王宮殿を警備する衛兵が居住している兵舎だ。
総勢1200人が警備に当たっており、交代で警備を任されている。
「ふぅ、また片付けるのは嫌だったな…」
「本当にそうだな。斬られた首がこっちを向いているように見えて怖かった…」
こう会話するのはメルケスにより殺害されたコルテスの死体を片付けた衛兵達だ。
ガチャ…
「んあ?…!?し、司令官ッ!?」
衛兵の1人が驚愕な声を上げた。
それもそうだろう。何故なら、ドアから現れたのは紛れもなく、第1帝王宮殿を警備する第1帝王宮殿警備隊最高司令官 リッカー・アボガルフ 大佐 だったのだから。
「し、司令…何故ここに!?」
衛兵達が驚く中、リッカーは近くにある椅子に座るとこう言った。
「俺たちの仲間にならないか?」
「「へ?」」
「簡単な仕事だ。この兵舎からラッパの音が聞こえれば、兵舎の中で大人しくしていろ。そして、兵舎の外にいるならば兵舎の中へ行け。これだけだ」
2人の衛兵はリッカーの言ったことがわからなかった。
「別に意味は分からなくていいんだ。今言ったことをやればいい」
「は、はい…」
「では、頼んだぞ」
リッカーはそういうと去っていった。
カッカッカッ
リッカーは廊下をスタスタと歩いていた。
(まだまだ…時間は足りない。俺たちの国を…、民衆の為の国を作るんだ!)
秋水大帝国 ミカヅキ 諜報省 第1作戦会議室
暗闇に包まれ、少しばかりのライトで照らされたこの第1作戦会議室に3名の男達が居た。
「『友人』は行動を開始したそうです」
緑の軍服に赤い襟を付けた男は言った。
「やっとか…、あとどのくらいだ?」
緑の軍服に黄色い襟を付けた男は赤い襟を付けた男に疑問を呈した。
「あと…」
「4ヶ月が相場じゃないか?」
緑の軍服に灰色の襟を付けた男は言葉に詰まった赤い襟を付けた男をフォローする。
「あと、4ヶ月か…。愚連隊の奴らも喜ぶな」
黄色い襟を付けた男は言った。