地球技術国家、砲弾外交しか知らない様子2
第1愚連艦隊 旗艦 大和 第1艦橋
(え、嘘…撃つの?撃たないよね…流石に!威嚇射撃なんてしたら外交問題だからね…。流石にやら)
「第1主砲塔から第3主砲塔に通常弾装填!」
(や、やめろやめろやめろ!絶対やめろ!)
「装填完了、撃てぇ!」
(バカ野郎ぉぉぉぉぉ!)
ドドドドドドォォォォォォォォォン
アルトの思いも虚しく、第1主砲から第3主砲に黒煙が発せられ、わざと放物線を描きながら、発射された9発の主砲弾は着水する。
ヒュルルルルルルルルルルルルルルン
ドドドドドドォォォォォォォォォン
海面に着水した衝撃で高波が発生し、このままでは飲み込まれると悟った見物していた野次馬は一斉に蜂の巣をつついたように逃げ惑う。
だが、幸い高波は少し水位が上がった程度で終わった。
野次馬はホッと胸を撫で下ろすと畏怖の対象であるにも関わらず、恐怖で体をガタガタさせながら、見物するのだった。
大和では…
チーンという擬音が似合うアルトの意気消沈の姿は松尾の視界に直ぐに入った。
「どうしたのですか?アルト外交官。」
「どうしたも何も…何故撃ったのですか…?」
アルトは力を振り絞り、体を松尾に向ける。
「我々の力を鼓舞する為にですけれど」
松尾は誇らしげに言った。
「いやいやいやいやいやいや、外交問題必須ですよ!しかも、α諸島(カルフォスト諸島)の制圧とか捕虜を作ったり、それを引き合いに出して国交締結とかもっと簡単に出来るでしょ!」
「と、言われてもですね…」
松尾は多少引き気味だ。
「いや、なんで引くんですか…」
松尾は一口、コーヒーを口にする。
「本当にこれは外交問」
「撃てぇ!」
「バカ野郎ぉ!」
そんなアルトをお構いなしにいつのまにかに松尾が命令したのか46cm3連装主砲から発射された9発の主砲弾が放物線を描く。
ヒュルルルルルルルルルルルルルルン
ドドドドドドォォォォォォォォォン
着水音が響くとローター音が上空に響き渡る。
ババババババババババ
「え、あのヘリの編隊は?」
アルトが問うと松尾は答えた。
「あれは衛星や無人機による偵察で判明した位の高いとされる人物が住まい、警備も尋常ではないのでそこは乗り込み、人質に取ります」
「…え?」
(いやいや、頭おかしいんか?え、どゆこと?人質にとる?もう、主砲撃ってる時点でもう外交問題だけど…そんなことしたら…ねぇ!なんでこんなことするのかね愚連艦隊はよぉ!)
「そ、それはちょっと駄目だと思」
「大丈夫です!我が愚連艦隊が認めるヘリボーン部隊です」
松尾は胸を張る。
(そーゆー問題じゃねぇんだよぉぉぉ!)
ババババババババババ
13機で編成された UHー1Y ヴェノム の編隊は配備されている第6特殊ヘリボーン部隊を乗せ、帝王宮殿へと向かう。
折り畳み可能なブレード4枚構成のメインローターが力強く空気を叩く。
「隊長、ゾクゾクしやすね」
隊員の1人が隊長である カートン・マルコス 少佐はこう答えた。
「あ?喋りかけんじゃねぇ、空気を読め。カス」
突然、浴びせかけられた罵詈雑言に話しかけた隊員は寝た。
隊員が隊長に話しかけ、隊長が罵詈雑言を吐き、罵詈雑言を吐かれた隊員は寝るというなんともカオスな状況なのだが流石愚連艦隊であるので…
誰も気にしない。
ババババババババババ
そこからなんやかんやあって第6特殊ヘリボーン部隊は帝都上空に到達した。
上空から双眼鏡で地上を覗くと帝都民が上を見上げ、その珍妙な形状のヘリコプターに驚愕の表情を隠せなかった。
「あと2分だ。隊員な降下準備を始め、狙撃手は所定の位置に付け」
帝王宮殿
「なんだありゃ?」
「あっちから来た謎の艦隊が威嚇射撃したのはわかったが、こいつは…?」
ただでさえ、役人や帝王の側近達が混乱しているというのに衛兵ですら混乱をきたし、帝王宮殿は大混乱となっていた。
「どうなっている?」
帝王であるマケインは窓から微かに迫ってくるUHー1Yの編隊に驚愕を隠せない。
「わ、私にも未だ判明しておらず、何処の国籍なのかすら分かりません。マクロビア湾での謎の艦隊ですが砲撃の後、全く行動を起こしていません」
「そうであれば、こ」
バリィィン
突如、ガラスが割れる音がした。
「な、何が起きているのだ…ッ!?」
遂に第6特殊ヘリボーン部隊は制圧作戦を開始したのだった。
上空
カチッ
バスッ
サイレンサー付き麻酔銃による麻酔弾の攻撃で次々と外で警備している衛兵をクリアしていく。
「外部ターゲットはダウン。制圧部隊を直ちに降下させよ」
シュルルルルルルルル
ロープに片手で掴まりながら、いつ攻撃対象が現れても麻酔弾で眠らせられるように麻酔銃を構えながら降下する。
バスッバスッ
制圧部隊の降下地点付近に短剣を抜きながら現れた衛兵は麻酔弾の雨を受け、一瞬にして倒れる。
倒れた衛兵は窓ガラスに向かって倒れ、ガラスが割れた。
バリィィン
「こちら、第2分隊。突入する」
『了解した。幸運を祈る』
カッカッカッ
第2分隊に限らず、各分隊は次々と突入していくのだった。
秋水大帝国 ミカヅキ 総統官邸
「総統閣下、現在接触中の国家とは他の国家と国交締結をするとは本当ですか…?」
報告員は寒涼が言い放った言葉に耳を疑う。
「本当だ。『EW 1艦隊』を派遣するのだ」
寒涼はニヤリと笑った。
紫電海
秋水大帝国から南に存在する海である紫電海は比較的海が寒く、荒い。その為、船乗りにとっては避ける海となっている。
凍てつく寒さで海軍も避けて通りたいと言わしめるこの海には海上ではなく、海中に航行する艦隊が居た。
『EW 1艦隊』だった。
『EW 1艦隊』はその名の通り、『East Warships 1』 の略称だ。
East Warshipsは西の軍艦と和訳出来る。
もう、分かった方も多いのではないか。
そう、西側の軍艦で編成された艦隊なのだ。
ズズズズズ…
18隻の艦隊であるESⅠ艦隊はタイフーン型原潜を5隻、ヤーセン型原潜を7隻編成し、キーロフ級重原子力巡洋艦を3隻、アドミラル・クズネツォフ級空母を2隻、山東(002型航空母艦)を1隻編成している。
旗艦 アドミラル・クズネツォフ CIC
「まさか、我が艦隊に頼むとは」
部下の報告に艦隊司令である 柏木 優 中将は大袈裟に両手を広げ、驚いたと言わんばかりのポーズを取る。
「まぁ、良い。直ちにSuー33による偵察を行え。もし、攻撃を受けるようであれば同時に攻撃能力を測れと言ってくれ」
「ハッ」
甲板上
キュイイイイイイイイン
蒸気カタパルトにSuー33がセットされる。
「Ready」
「 go」
シュュュュュュュュッ
Suー33が アドミラル・クズネツォフ から吐き出され、リューリカ=サトゥールン ALー31F3 エンジン2基から火線を吐き出す。
ゴォォォーーーーッ
続けて15機のSuー33が離陸すると3つの編隊を組むと謎の地域へと向かって行くのであった。
ショックシーカー帝国 帝王宮殿
「手を上げろ」
冷徹な声が部屋に響く。
「な、なんで…こんなことに…」
マケインは恐怖で声が震えている。
それもそうだ。黒に包まれ、サーマルを装着し、麻酔銃を構え、そこからはレーザーポインタが照射されている。
そんな謎の人型生命体が10人も集まって、自らに向けていたとしたら、恐怖の何物でもなかった。
「手を上げろ、これは最終通告だ」
冷徹な声を響かせたのは第6ヘリボーン部隊長のカートンだった。
「は、は…ひぃ…」
マケインは怯えながら手を上げた。
「よし、銃を下ろせ」
すると、1人の謎の人型生命体がマケインに近づく。
「貴様の名はマケイン・ショックシーカーだな?」
「そ、そうだ…」
「そうであれば話は早い。我々が今回ここを制圧した理由は…」
「カルフォスト軍基地にて捕虜としている軍人と交換で確実に国交を締結する為だ」
マケインはカートンの言うことを信じられなかった。
それもそうだ。国交締結の為に領土を制圧するなどあり得ない。
「『普通』での国交締結であれば可能だが、我が国は貴国に攻撃を受けている。それを加味すれば、貴国とは付き合うことはでき」
パァンパァンパァン
突如、カートンはS&W M500を構えるとパァンという乾いた音と共にマケインの後ろにあった3つの陶器が割れ、破片が飛び散った。
「さぁ、決断は今ですよ?答え方によってはこの陶器のように頭が散りますがね」
最強のリボルバーと言われるM500を選んだ甲斐があったと言わせるばかりにマケインの顔は恐怖に染まっていた。
薬莢がコロコロとカーペットを転がる中、カートンは一言口にする。
「次はないぞ?」
パァンパァンパァン
「す、済みませんでした…ッ…国交締結致します…」
こうしてショックシーカー帝国と秋水大帝国は見事(?)国交を締結したのだった。