地球技術国家、砲弾外交しか知らない様子
カルフォスト諸島
ババババババババ
第3特殊ヘリボーン部隊第4編隊は引き続き、カルフォスト軍基地司令部へと向かっていた。
しかし、その姿は戦闘機部隊により引きつけられていた第1、第2、第3飛行防衛隊によりガッチリと確認されていた。
上空
ゴォォォーーーーッ
俊敏に駆け回るFー35Cにカルフォスト軍基地が保有する3個飛行防衛隊は全くもって追いつけやしない。
「くそ!もう、どうなってるんだ!」
こう愚痴を漏らすのは第1飛行防衛隊隊長の モール・ジュルター 1佐だ。
肉弾戦を得意とする彼らに高速で近くをすばしっこく駆け回るFー35Cに苛立ちを隠せずにいた。
「はぁ、しょうがないですよ。こんな速さで駆け回れたら…。」
第3飛行防衛隊隊長の マッド・コルナー 1佐はモールの苛立ちを収めようとする。
「攻撃してこないことを見ると敵対意識はないのでしょう」
第2飛行防衛隊隊長の ジョイス・コッド 1佐はRQー170の偵察による場面を間近で見ていたジョイスは落ち着いた表情で言う。
「そうかもな…んあ?」
モールは何かを見つけたのかその方向に指を差す。
「あの回転してる羽虫みたいなやつはなんだ?」
モールが指を差したのは紛れもない第4編隊だった。
「追いつけないこいつらより、あの奴らを狙おうぜ」
モールは意気揚々と指をポキパキと鳴らす。
「じゃあ、そういうことにしましょうか」
マッドもジョイスも乗り気だ。
ヴォォォォン
3個飛行防衛隊は一斉に第4編隊へ向かって行った。
第4編隊
編隊長の カルティル・エル 2佐は編隊長機のUHー60Jの窓から降りてくる無数の人影に目を見開く。
「敵襲。直ちに散開し、乗員している歩兵はロープ降下準備を行え」
カルティルは表情では驚いているものの、声では全く驚かず、冷静さを保っていた。
「どっしぇぇぇい!墜としてやらぁ!」
モールは右腕に炎を起こす。
キィィィィィィィィン…
耳に電撃が走った。
「うぉっ…耳…が…」
モールは耳を押さえるとうずくまりながら、どんどんとモールは落下していく。
ドォォォォ…
派手に粉塵が舞った。
「モール!ゆ、許せねぇ!おり…」
「墜と…」
キィィィィィィィィン…
マッドとジョイスの耳にも電撃が走り、耳を押さえながら、モールと同じ格好で落下していく。
ドォォォォォォ…
モールの近くに粉塵が舞う。
他の飛行防衛隊の隊員も耳を押さえながら落下し、その姿は蚊取り線香により、舞い落ちる蚊のようだった。
そして、落下した隊員により、埋め尽くされた大地の近くの雑木林の中に迷彩色のハンヴィーが鎮座していた。
「ふぅ…、ハンヴィーのお陰だな…」
カルティルは額から出た冷や汗を手の甲で拭う。
ババババババババ
第4編隊は着々と司令部へ向かって行った。
司令部
「第1、第2、第3飛行防衛隊から通信が途絶えただとぉ!?」
ソルトの怒号で伝令兵がビクッと震える。
「は…はい!同時に通信が途絶え、最後には何か金切り声のような音声が入ると途絶しました…」
「んな馬鹿な話があ」
「もしかしたら、あるかもしれませんよ」
こう、ソルトの言葉を遮ったのはカルフォスト軍基地副司令の マーキング・アンチャスター 少将だ。
彼はソルトのように混乱をきたしておらず、冷静に敵を分析していた。
「前日に現れた『白色のブーメラン型の何か』は全く攻撃しなかった。これは、偵察隊なのではないかと推測します。ゴルゾン帝国であれば、即攻撃というのが当たり前ですので、もしかしたらの可能性ですが我々を知らない他国の偵察という場合もあります。そして、今回の第1、第2、第3飛行防衛隊の通信途絶前の金切り声と次々に途絶えている監視塔からの通信途絶前の金切り声は一致している。ということは新手の手法で攻撃をされている、という事です。しかも、爆発や銃撃といった音が聞こえないのも他国による気付かれてはいけないような作戦のような気がします」
「ゴルゾン帝国の隠密作戦部隊という場合は?」
ソルトはさっきとは一転して冷静になる。
「それはないでしょう。可能性としてはありますが、火力でゴリ押しして植民地を増やしている国家ですよ?可能性は低い。しかも、わざわざ上空で待機している『火線を後方に伸ばした灰色の鳥』が攻撃してこないのも根拠です」
マーキングは葉巻をふかしながら、天井を見上げた。
「そうか…そうであれ…」
ソルトはふとマーキングから視線を外す。
「な、なんだ…お前ら…うぐっ」
ドタン
ソルトは前のめりに倒れた。
「し、司令!な、なんだ貴様ら…う…」
マーキングは倒れたソルトを見て、拳銃を構えるが直ぐに後ろに倒れる。
マーキングは薄れゆく意識の中、周りに倒れている無数の衛兵や通信士、伝令兵を横目で見ながら深い眠りへと落ちていった。
「制圧完了です。ええ、しっかりと撃ち込んでおきましたよ。目覚めるのは朝かと。ええ、はい。確かにそうでしょう。彼等は銃弾を受けたと勘違いしているでしょうね。我々が撃ち込んだのは麻酔弾だというのに」
そう、第4編隊からヘリボーンしたカルティルを中心とした第6突撃歩兵部隊は麻酔銃を用いて、片っ端から麻酔弾を叩き込んできたのだった。
「ええ、では。直ちに帰投します」
カルティルは通信を切った。
「政府はこの事をどう処理するのでしょうか?下手したら、というかもう下手してますが丸ごと外交問題ですよ?」
隊員の1人がカルティルに訊ねた。
「それは私にもわからない。それは外務省が行う事だ。もし、失敗して戦争状態になればX艦隊所属の潜水艦隊による核攻撃で無理やり押さえ込むだろう。この国は良くも悪くも強引だからな」
カルティルはそう答えると麻酔銃を背中に掛け、帰投を呼びかける。
「もういいだろ。いくぞ」
第6突撃歩兵部隊は足早に去っていった。
秋水大帝国 ミカヅキ 総統官邸
「…という訳であります」
報告員は寒涼に基地の制圧を報告する。
「良くやった。この諸島を所有するショックシーカー帝国と連絡は取ったか?」
「ええ、使いという形で」
「編成は?」
「戦艦6、巡洋艦3、駆逐艦12、潜水艦4、空母3、輸送艦7です」
報告員はしれっととんでもない発言をする。
「そうか、素晴らしい編成だ。相手はなんと言っている」
「『捕虜を解放するならば、国交を結んでも良い』と」
「そうであれば直ちに解放しろ。音響兵器車両部隊と飛行場に駐機しているヘリボーン部隊も撤退させよ」
寒涼は目の前にある水冷式のパソコンに目を移しながら言った。
「ハッ、ではこれで」
報告員はそういうと去っていった。
ショックシーカー帝国 帝都 マクロビア 帝王宮殿
ここは、ショックシーカー帝国の帝都であるマクロビアだ。マクロビアはショックシーカー帝国の中で最も発展している都市であり、帝都民達はほぼ貴族か親族、王族や裕福な商人等が住んでいるまさに帝都全体が宮殿のようだった。
しかし、その宮殿のような都市の中心に帝王が居住している場所である帝王宮殿は金銀が散りばめられた派手さを極めたような建物だ。
この宮殿には王族か限られた親族、商人。屈強な衛兵しかおらず、無茶して入ろうものならば、直ちに衛兵が駆けつけ、殺害されてしまうのだ。
そんな宮殿の主である帝王のマケイン・ショックシーカーは自分の身に降りかかった出来事に恐怖を覚えていた。
「奴らは悪魔か…?」
マケイン・ショックシーカーはガタガタと震えるといつもなら威厳を放ち、人々から尊敬の念を貰っている彼の姿は何処にもなかった。
時は少し遡り…
2時間前 マクロビア湾
ザァァァァァァァッ
突如現れた鋼鉄の艦隊。それらを見た兵士や帝都民はこういった。
『悪魔の襲来』
と。
秋水大帝国海軍 第1愚連艦隊 旗艦 大和 第1艦橋
戦艦の代表格と言わざるを得ない戦艦である 大和 の第1艦橋には第1愚連艦隊艦隊司令の 松尾 健太 中将が日本酒を飲みながら座っていた。
本来であればあり得ない光景であるが、これは愚連艦隊ならではの事であった。
愚連艦隊とはその名の通り、軍人の中でも優秀であるが荒くれ者達が集まる艦隊。つまり、愚連艦隊である。
そして、愚連艦隊には力でゴリ押しするが、ただゴリ押しするだけではない戦略家の参謀達やいつも無茶をする航空屋を統括している荒くれ者の松尾司令が居座り、通常の軍人であれば近付きがたい存在だ。
「司令、そろそろ反応してくる頃ですぜい」
参謀の1人がワインを片手に話しかける。
「そうだ。威嚇射撃でもするか?」
松尾の言葉にケラケラと笑う参謀ら。これを不快そうに見ているのは外務省から派遣された外交官である アルト・ティート だ。
アルトは予想していた軍隊の様子とはかけ離れた愚連艦隊の様子に顔をしかめていた。
(何故こんなに好戦的なのだ…。戦争自体は回避せねばならんはず…なの)
「どうしたのですか?アルト外交官」
松尾がアルトの顔を覗き込む。
「い、いえ。なんでもありませんから」
「そうであれば別に良いですが。具合が悪ければ医務室へどうぞ」
松尾は医務室の方向へ指を差す。
「お気遣いありがとうございます」
(あ、危ねぇ…。バレるとこだった)
アルトは冷や汗をだらだらと流した。
ザァァァァァァァッ
菱形の陣形を取り、大和型戦艦2隻とニミッツ級原子力空母3隻を中心にし、その周りをアーレイバーグ級イージス駆逐艦8隻で固め、菱形陣形の角にアイオワ級戦艦を1隻ずつ、合計4隻配置。そして、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を3隻をニミッツ級原子力空母とアーレイバーグ級イージス駆逐艦の間に配置し、ルイス・アンド・クラーク級補給艦5隻とベルリン級補給艦2隻を後方に位置するアイオワ級戦艦付近にオハイオ級原子力潜水艦を4隻海中で艦隊付近に自由航行させている。
合計28隻の大艦隊である第1愚連艦隊はマクロビア湾に到着した。
ザバァァァァァァァ…
荒波が立ち、穏やかであった海面は一気に荒れ狂う海となった。
湾内で漁をしていた漁師や釣りをしていた帝都民はマクロビア湾を警備する警備艇が横倒しになりかけている姿を発見し、何事かと警備艇より先に視線を向けると今まで見たことのない巨大艦隊が迫ってきていた。
阿鼻叫喚が帝都を包んだ。




