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秋水大帝国の歩み  作者: ZERO零
2/6

地球技術国家、初手から容赦せず2


秋水大帝国 首都 ミカヅキ 総統官邸




コンコン



「入れ」



ガチャ



「総統閣下、藍那方面軍によると人工衛星の情報と正しい陸地や地形を発見したとの報告が上がりました」


寒涼へ秋水大帝国の異常を知らせた報告員が再び参る。


「そうか、ならば良い。直ちに艦隊を派遣し、接触するのだ」


寒涼は落ち着いた様子で言った。


「ハッ、それで」


「いや、少し待て」


寒涼が報告員の言葉を遮る。


「派遣する艦隊は『X艦隊』だ」


寒涼の言葉に力が入る。


「『X艦隊』…ですか。わかりました。直ちにX艦隊を派遣致します」


「では、失礼致します」


報告員はそういうとドアノブを捻って、去っていった。


「…『X艦隊』を派遣。我ながら、とんでもない案を受理させてしまったな…」


寒涼は1人しかいない部屋で豪快に笑った。




藍那海




ザァァァァァァァッ



穏やかな藍那海に鋭く、波を切り裂くように艦隊が航行していた。



『X艦隊』である。



X艦隊は全時代的であるが、戦艦を編成しており、空母を中心とした空母打撃群だ。


しかし、何故この艦隊がX艦隊と呼ばれているかというと、彼等が秘密裏に行動しているからであり、そもそもX艦隊自体が秘密裏に建造されているのだ。


作戦自体も秘密裏に行う為、X艦隊全艦が集合して航行することは少ない。


だが、現在X艦隊が全艦航行しているのには理由がある。


それは、どこなのか分からない謎の地域であるからだ。


経験豊富で技術も高いX艦隊は並大抵の事であれば余裕でこなす。


通常よりも2倍近く任務を速く終わらせる。


しかも、全てが完璧なのだ。



まぁ、あくまで『設定』であるのだが。



その為、X艦隊に白羽の矢がたったのである。




旗艦 原子力空母 ジェラルド・R・フォード CIC



「こちら、X艦隊司令の 松木 健太 中将である。これより、付属艦の 強襲揚陸艦 アメリカ を用い、LCACー1型による上陸作戦を行う」


X艦隊の長である松木は無線で本土司令部へ確認を取る。


『了解、直ちに行え』



ガチャ…


すると、松木は無線を切って近くに置く。


「聞いたか?航空屋は離陸し、上空の制空権を取れ。上陸屋は後から続く。分かったか?」


「「「「ハッ!」」」」


松木の言葉で軍人達はキビキビとした動きで去っていった。



甲板上



電磁カタパルトという前級であったニミッツ級では装備されていなかった電磁カタパルトからFー35C ライトニングIIが上空へ吐き出される。



シュウウウウウウウン



一瞬、機体の重みで下降するが、プラット・アンド・ホイットニーF135 エンジンの火力で態勢を立て戻す。


そして、合計20機のFー35C ライトニングIIはカルフォスト諸島の制空権を取る為に大空へと飛び立っていった。



カルフォスト諸島



ゴォォォーーーーッ



RQー170が現れた際と同じ爆音が地平線から奏でられると軍基地内は混乱した。


ゴルゾン帝国であれば攻撃するのに昨日の襲来はまるで偵察のようだったと。


そして、今回は白色のブーメラン型の何かではなく、少し歪ではあるが、灰色をした鳥のようだった。


「ま、また来たぞ…!」


「ご、ゴルゾン帝国の襲来だぁぁぁぁ!」


こう叫ぶ者も居れば、


「他国のモノではないか…?」


「また、偵察だろう」


という者も居た。


そんな軍人達よりも混乱していたのは司令部である。


2度もの襲来(カルフォスト軍基地側の判断)を許し、精鋭の第2飛行防衛隊ですら歯が立たなかった。


司令部の面子は丸潰れである。




司令部




「どうなってやがる…ッ!」


こう怒号を響かせるのはカルフォスト軍基地司令である ソルト・マター 中将だ。


彼は本来であれば冷静かつ迅速な対応を可能とする有能な司令官であるのだが、今回ばかりは摩訶不思議であり得ない現象に混乱をきたしていた。


「くそ!第1飛行防衛隊、第2、第3…ええいままよ!全て出せ!」


「ハッ!」


ソルトは机をバァンと拳で叩いた。


「おのれ…!何の為に来るのだ…!」


ソルトは青筋を立てて、ワナワナと怒りで震えていた。



強襲揚陸艦 アメリカ




ザバァァァァァァァーーン



ウェルドッグから2隻のLCACー1型が進水する。



ヴォンヴォンヴォォォン



リフトファンが稼働し、シュラウテッド式・可変ピッチプロペラが勢いよく回転する。



ババババババババ



海面に荒い白波が立つ。



ドシュシュウウウウン



2隻のLCACー1型が僅かながらある砂浜に座礁するように上陸し、兵員輸送車であるKー16 IFV型を合計で4輌降ろす。


Kー16はIED対策を考慮したV字車体で3名の操作員に加え、9名を乗せることが可能でNBC防護機能や自動消化装置も備えている。そして、ウォータージェット推進による水上航行も可能であるのだが、LCACー2型による輸送の方が安全である為、今回は使用しなかった。


主武装は2A42 30mm機関砲、9M133M コルネットーM対戦車ミサイルを装備しており、副武装はPKT 7.62mm機関銃が装備されている。



ドゥルルルルルルルン



YaMZー780 4ストロークV型6気筒液冷ターボチャージ・ディーゼルエンジンが稼働する。


すると、一斉にKー16 IFV型が動き出し、カルフォスト軍基地を守る崖に差し掛かると後部ハッチを開け、歩兵を降ろす。


そこから降ろされたのは崖など山岳地帯を得意とする第10山岳師団の第32歩兵大隊だ。


本来であれば全員到着であったのだが、第2陣の上陸部隊からのKー16 IFV型による輸送でこうぞくするよていだ。


「行くぞ、この戦いは気づかれてはならない。戦闘機部隊による注意は引いているが、いつもの訓練を思い出せ」


大隊長である カシュレーゼ・アーカルド 1佐はそういうと鋭く340度に反り上がった崖を見上げる。


「こりゃ、久しぶりに腕が鳴るぜ…!」


カシュレーゼはそういうと部下を引き連れ、ハーケンと登山用ピッケルを用いて、登っていくのだった。



強襲揚陸艦 トリポリ




ザバァァァァァァァーーン


強襲揚陸艦 アメリカ の同型艦である トリポリ から2隻のLCACー1型が浸水する。


そして、第32歩兵大隊の後続部隊が搭載されているKー16 IFV型に乗員していた。




強襲揚陸艦 ブーゲンヴィル




強襲揚陸艦 トリポリ と同じく、 強襲揚陸艦 アメリカ と同型艦である ブーゲンヴィル からLCACー1型が浸水する。


そこにもKー16 IFV型が搭載されているた。


4隻のLCACー1型は砂浜へ上陸する為、シュラウテッド式可変ピッチプロペラが勢いよく回転し、白波を立てた。

 


カルフォスト諸島




カッ…ゴッ…



反り上がった崖をよじ登る第32歩兵大隊は後続部隊と合流し、一緒に崖登りをしていた。



ガッ…パラ…パラ…シャッ



突然、土を抉る音が響いた。


「ようやくか…。よし、GLUASを使え」


GLUASとは第32歩兵大隊に6名編成されている40mmグレネードランチャーを主武器とした兵が保有している投擲筒発射式無人航空機システムの事である。


名の通り、40mmグレネードランチャーから同軸プロペラとジャイロを用いて空中静止が可能なヘリコプター型のドローンを射出する事が出来る。



ポスッ…ポスッ…ポスッ…



ヘリコプター型ドローンが射出され、上空で同軸プロペラとジャイロを展開する。



ビビビビビビビ…



完全に展開し終わったドローンはグレネードランチャー兵により、タブレット端末から操作される。



「よし、グレネードランチャー兵は引き続き、ドローンを操作し、待機していてくれ」


「「「「「「ハッ」」」」」」


展開された12機のドローンは散開し、カルフォスト軍基地を隅々まで探索するのだった。




秋水大帝国 ミカヅキ 総統官邸




コンコン




「入れ」


「失礼します」


突如、鳴らされたノックに一瞬、驚く寒涼だったが直ぐに持ち直す。


「現在の上陸作戦の現状報告に参りました」


「おお、そういうことか。続けてくれ」


「現在、X艦隊はまず、空母からFー35Cの航空部隊による制空権の奪取と兵の注意を引きつけていて、強襲揚陸艦を用いてLCACー2型を中心とした上陸部隊により上陸。その後、山岳師団第32歩兵大隊による崖の攻略。そして、現在はドローンによる偵察が行われており、安全が確保された場合には輸送機を用いた空挺団との共同作戦が実行される予定です」


寒涼は空挺団という言葉に視線を報告員に向ける。


「空挺団を使うのか?」


「そこを了承していただく為に参ったわけであります」


「そうか…。空挺団を用いるのは全くもって異論はない。だが、輸送機を使うとなると上空の制空権と注意を引きつけているFー35Cの航空部隊の努力が無駄になるであろう。そう考えるとヘリコプターによる空挺作戦の方が正しいと思うがね」


寒涼はパソコンを操作しながら言った。


「そして、ついでにヘリボーン作戦を行うのはこいつでいいんじゃないか?」


寒涼が見せたパソコンの画面を報告員が見ると驚愕の顔に変わった。


「ま、まさか…。この部隊はまだ試験中の部隊ですよ?本作戦で使うのは…」


「いや、どちらにせよヘリボーン作戦は行う。普通に完遂する通常部隊より、新設された部隊を使った方が為になるだろう」


「そういうことであるならば…了承致します」


「分かった。では、他の仕事に戻ってくれ」


寒涼がそういうと報告員は頭を下げると去っていった。



ガチャ…バタン



「些か…やり過ぎか…?いや、これくらいの方がちょうど良いか。未知なる世界で容赦など必要ないな…」


誰もいなくなった部屋で寒涼はそう呟いた。



カルフォスト諸島 上空



ババババババババ



10機のUHー60Jの編隊であるX艦隊第3特殊ヘリボーン部隊所属第4編隊がゼネラル・エレクトリック社製のT700型ターボシャフトエンジンがシングルローターを稼働させ、プロペラが空気を叩く。


高度は100mを切っており、低空飛行していた。


第3特殊ヘリボーン部隊とは、X艦隊に所属しているヘリボーン作戦を行う特殊部隊である。


未だ輸送艦による試験状態で、いざという時の切り札として格納されていた。


この第3特殊ヘリボーン部隊は各個優秀な空挺部隊から引き抜かれており、代表的な空挺部隊を保有しているスペツナズやシールズ、モサドや第1空挺団等である。


本部隊は基本的にUHー60Jで構成され、UHー60VやAHー1Z、MVー22Bで編成されている混成部隊も多い。



ババババババババ



すると、第4編隊の真横を監視塔が複数横切る。


しかし、監視員は全く気付かず、視線に入っても耳を両手で押さえ、うずくまっている。


それには監視塔の近くに迷彩色で擬態しているハンヴィーが4輌停車しているのが原因であった。


そのハンヴィーには天井付近に直径80cm程度の六角形をしているモノが付いていた。


そのモノはLRAD(long range acoustic devise)。その名の通り長距離音響発生装置である。


長距離音響発生装置は主に音響兵器という類に分類され、非殺傷兵器として有名だ。


今回はあくまで接触(と言っても範疇を超えている)なのである。その為、他国軍人の殺傷は避けたいところであった。そのような経緯でヘリの爆音で監視員を気付かせない為に監視員の無力化として音波を放ち、聴覚を遮断する音響兵器を用いる事となったのであった。



ババババババババ



そして、第4編隊の進む方角はカルフォスト軍基地司令部を差している。


その進路にある監視塔の周囲には当然の如く、ハンヴィーが鎮座していた。




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