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異端のエルフが魔法を組み立てる。

「マタン、意味がわからない」


 スキアが言い放った言葉に激しく同意したい。"天"すら頷いていた。




 ファウストは今僕たちが立っている世界である。滅んでいたり、魔法で隠されていたりと普通とは大きく異なる世界ではあるが、それでも現実に存在している世界だ。それを、夢にする?


 はっきり言って、僕には意味不明だった。


「あ~、でも夢なら、うん、なるほど。場所なんて見つからないし、入れる人を好きに調整できるし、夢の中で戦っても現実には影響しない。つまり普通の余波じゃ魔法が揺らいで現実に穴が開くなんてこと起こらない。いいんじゃないかな~。実現可能だと思えないこと以外は」

「実現できなきゃ意味ないですよね」

「方法、思いついてるの?」


 "天"が実現可能だと思えないなんて言っているのにできるのだろうか。スキアが問いかけ、話を詳しく聞いても理解できなかった。


「あー、"天"の頭の中に突っ込むとか」


 まず、こんなことを言い出したのだ。


「何を?」

「ファウストを」

「……なんだって?」

「だから、ファウストを丸ごと、そのまま"天"の脳内に突っ込めば」

「無理だろう!?」


 ルクスが発言を遮るようにして叫んだ。気持ちはわかる。


「どうなってるの、あなたの思考は」

「無理じゃねーって、たぶん」


 アンディーンたち神もその発想に追い付いていなかったが、マタンは譲らない。


「本気で言ってるの、マタン。できるように思えないのだけど」

「…………確かにボクの頭の中にあれば誰にも見つからないだろうけど。ボクの夢渡りを加味すれば、行き来もまぁできると思うけど。世界を一つ、そのまま脳になんて入らないよ?」

「『導きの図書館』を一冊の本に封印したのと同じ原理を使えば、いけると思うんだけど」

「あ、あ~? う~ん」


『導きの図書館』か。確か図書館を丸ごと一冊の本に封印したのだというが。あれ、というか。


「『導きの図書館』って今どこにあるんですか?」

「俺が持ってる」

「は!?」


 パっと空中から現れた本を見て"天"が驚愕した。彼は『導きの図書館』の存在を知らなかったらしい。いや正確には、今なお無事だとは思いもよらなかったようだというべきか。


「は~、バッチリ残ってるね~」

「ん。これを参考に魔導を組むから待ってろ」


 世界を夢の存在に変えるために、図書館を本に封印する魔法のどこをどう参考にするのか。いやまぁ夢の中にというか、"天"の脳内に封印すると考えれば……?


 この僕の考えはおおよそ当たった。マタンは『導きの図書館』より工程が増えるというが。


「ファウストを"天"の中に封印する。そして"天"が封印を部分的に解く。記憶として完全に構築されるけど、現実には復活しない程度に。封印の解除を敢えて半端にすることで、記憶の中っていう実体の無い状態を維持する」

「それ、その中に住めるの?」

「俺らも封印対象に含めば問題ない。ファウストから出る時には完全に解除して、入る時に封印し直し、また部分的に解除。これでいい」


 住民となるマタンたちも一緒に封印される状態になって、『導きの図書館』で本を借りるみたいにして出入りするのだろう。ああ、僕やリヴァも封印されておいて、普段は一時的に解かれた状態として自分の世界にいればいいのか? それでファウストに入るときは封印してもらって。


 その出入りは生物でも可能なことなのだろうか。その封印は上手くいくのか。不安は尽きない。


「そもそも神の中でも凄い存在とはいえ個人の脳に世界を一つ丸ごと収納するって無理がある。夢にするってつまり、"天"の記憶や想像力で現実に存在したファウストを完全に作り上げる、でいいんだよね。できるの?」

「"天"の頭脳は元から『世界』を記憶することに特化してる。各世界の起源、営み、終焉を残らず記憶してるその脳を利用すれば、現実に存在する世界だって脳内にそのまま構築できる。ファウストなんてほぼ何もねーんだから楽だろ」


 "天"とは考えていた以上に驚異的な存在らしい。その量は一体どれだけ膨大か。いわば世界の一生を記憶しているということ。一つの世界であっても僕ではとても把握できないものだ。それを文字通り星の数分覚えていると。


「ボクの記憶容量、そこまで余裕ないんだけど~」


 それはそうだろう。この上さらに現在のファウストそのものを完全に記憶し脳内に展開しなければならないなど、随分と負担だ。


「それなんだけど、先にお前の記憶を封印してファウストに置かねーか? 本の形にでもして。古い世界の興亡に関する記憶だけでも」


 だが、マタンはこうして解決策を提示した。これがまた予想外の提案だった。特に"天"にとっては。相変わらず斜め上を行くものだ。


「何、ボクの記憶を封じろってこと? キミの都合で?」

「記憶の封印ってことになるけど、別に必要になったらいつでも引き出せるぞ。お前の頭の中に入ってる書庫なんだから。何なら俺が受け渡しまでやってやる」


 なんだか、二人の立ち位置が"天"と初対面の時とは逆になっていた。"天"が突っぱねているけれどマタンは説得している。そして何故か説得している側の方がどちらかというと非常識だ。


「そしたら、記憶に余裕ができるだろ? ナイラミューズやラシアとの思い出みたいな、私的な記憶も覚えていられるぞ。俺はお前を利用するんだし、お前も利用しろよ。ファウストを"天"の書庫として使えばいい」

「なんで、キミがそんなこと気にするの。ていうか、ボクのこと嫌いなんじゃないの~? なのにファウストをボクの中に封印しようとしてるし」

「俺の中じゃフレアと同じ枠なんだ、お前は。嫌いだけど、信用してるっつーか」

「……そっか。そうなんだ」


 何か納得した様子の"天"が頷いた。


「いいよ~。やってみな。ボクの記憶、膨大だけどね」

「世界一つ使えば、流石に収まるだろ。とりあえずは」

ファウストが幻の存在になって、その幻の中に"天"の記憶をinすると思ってもらえれば

『導きの図書館』的封印というのは、つまりパソコンのフォルダ的なあれです

今まではパソコン本体に全データ区別なく放り込まれてたけど、そこにUSBメモリ差して、フォルダ作って綺麗に整理して入れとこうって提案

マタン「データ管理してやるよ任せろだからUSB大事に持ってて」みたいな


(これで伝わるか超不安だけど頑張ってなんとなくでもわかってくれたら嬉しいです)

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