表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新春連歌の会2020  作者: 秋の桜子、かわかみれい、黒鯛の刺身♪、砂礫零、間咲正樹、水渕成分、森野昴、陸 なるみ、しいたけ
8/20

秋の桜子さまよりSS【(7)~神社と先生と庭師~ に寄せて】

秋の桜子さま

(https://mypage.syosetu.com/1329229/) 

より(7)グループにSSいただきました。


四句『誘われ咲くは ナルキッソス一輪』


こちらの句に寄せた、とても美しいお話です。


秋の桜子さま、ありがとうございます!

かの国に春に先駆け咲く花は、黄色いラッパスイセンという。




谷間をただよう雲のように


  一人さまよい歩いていると


  思いもかけずひと群れの


  黄金に輝く水仙に出会った


  湖のかたわら 木々の根元に


  風に揺られて踊る花々



銀河に輝く星々のように


  びっしりと並び咲いた花々は


  入り江の淵に沿って咲き広がり


  果てしもなく連なっていた


  一万もの花々が いっせいに首をもたげ


  陽気に踊り騒いでいた


〜ウイリアムワーズワース『水仙 The Daffodils』抜粋




香り高き黄色のそれが、頭を持ち上げ咲く。凛と佇み咲き乱れる、時が進む。春の時が……。雲雀は恋の歌を歌う、番を求めて空を舞う。


春風は枝葉を揺らし、目覚めの時が訪れた事を知らせる。



大地に濃い緑の葉が開く、蕾を持ち上げる、花弁を開く、クリーム色の花が咲く。森の中で、湖畔で、プリム・ローズが花開く。





………私が死んだらここに埋めてね、君はそう言った。僕達夫婦は、森の奥深くに住んでいた。生まれ育った村から離れた場所に……。



「ごめんなさい、ごめんなさい」



無慈悲な神の思し召しにより、不治の病になった君は、日に幾度も僕に謝っていた。そして掟に従い、ある冬の日に、村の人達は、病の妻を森に棄ててくるよう夫である僕に迫った。



そんな事はできないといえば、出ていけと言われた。僕は妻を連れて村を出た。北風吹きすさぶ中、何処に行けばいいのか、途方にくれていた。


持ち出した物は僅かな蓄えと毛布。病身の妻を抱えて、歩けるだけ歩き、日が落ち、疲れ果てて道端にしゃがみこんでいると、偶然か、神の思し召しなのか、一人の風変わりな神父様と出会い、拾われた。



「空いている小屋があるから、そこに住みなさい」



深い森にある、カクテールのつるバラに覆われた古い教会、その庭先にある堂守の小屋が、妻の終のすみかとなった。



そこに住み着いた年の春、水仙が終わると、あちらこちらに、プリムローズが咲き乱れていた。クリーム色の花が群れとなり咲いていた。神父様が抱えた仕事の手伝いをする合間に、いくつか摘んで枕元に運んだ。



きれい、ありがとうと、細く細くなった手で、それに触れた妻。


それを二度目を見ること無く、妻は旅立ってしまった。堂守をしつつ、妻に寄り添い、そこで緑の溢れる夏を、紅葉の秋を、白い冬を過ごし、衰え病みゆく彼女の手を握り、残された日々を数えつつ過ごした。


やがて、再び水仙が立ち上がり、うつむき咲き、それが終わる頃、愛らしいクリーム色の花が、そのかんばせを開いた。先立つ花を摘み、時が終える妻に捧げた。


「小さい頃に、あなたが、森で摘んで、花束を、くれた、あれから、大好きな、花な、の」


だからその下で眠りたいわ……、喘鳴の下最後に交わした、懐かしい話。名残にぽつりぽつりと残る、水仙の黄色。ブルーベルの青。プリムローズのクリーム色。濃い緑の葉。木々の若葉が開く新緑の森。


空には小鳥が歌う、動物達が駆け回る、全てが春の息吹に燃え上がる。そして……、命を産み出す大地に抱かれ、妻はそこに眠る。


プリムローズが咲く森に。


僕は永久にそれを眺めるだろう、冬が終わり春が来ると必ず咲く、神様からの贈り物を。




終。

桜子さまは詠まれる時に陸さまの詩

『長引く冬を彷徨って』 も思い浮かべられたそうです。


ひとつの言葉に複数のイメージを込める、まさしく短歌や俳句といったものの楽しみ方ですね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 後書きの拙作いつ言及してくださったんですか? 初見時気づかなかったのかしら? プリムローズ好き同士だとは存じていましたが、桜子さまが実際意識して書いてくださったとは! 今更で申し訳ないで…
[良い点] 拝読しました。 秋の桜子様のインスピレーションというのでしょうか? 一つのイメージから新しい物語を編む力。 それが抜群のように感じるのです。 美しい物語ありがとうございました。
[良い点] 拝読しました。 秋の桜子さまのSS、心に泌みるお話でした。 好きな花のもと眠りたいと思う気持ち、わかります。私のおじいちゃんも桜の下がいいなあと、よく申しておりました。 映画の一幕を観た…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ