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幼馴染は残念でした  作者: 暁
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0.ある朝のできごと




朝日がきらきらと、カーテン越しに部屋へ届く。

ちかりと瞳にあたって、微睡んでいた意識を引き上げる。


ふわあと、淑女らしからぬはしたなくも大きく口を開けたあくび。

もぞもぞと仰向けになって、寝っ転がったまま背伸びをした。


ぐっと伸ばした足に、びきりと走る激痛。


「っひ、いたたたたたっ! つった! つったー!」


飛び起きて足をさすりながら痛みを誤魔化す。

ああ、なんという朝だろう、せっかくの休日なのに。

こんな痛い方法で運動不足を露呈しなければならないなんて。

あまりの不運にひいひい嘆く。


しばらく呻いていると、ココンと軽くドアがノックされて、静かな動作でメイドのティトが入ってきた。

その手にはキッチンワゴン。その顔は呆れ。


「おはようございます。朝から何を騒いでいるのですか、シェリー様」

「お、おはよ……別に騒ぎたくて騒いでるわけじゃないんだ……」


ようやく痛みがとれてきて溜息をつく。


ティトは胡乱な目をしながら、ベッドそばにキッチンワゴンを押してきた。

淹れてくれた暖かな紅茶を手渡され、一口飲んで完全に目が覚めた。

そっとベッドを降りて足を確認したあと、クローゼットを開けて簡単に着替える。


「足が痛んだのですか? このところは長く執務室に篭もりきりでしたから、そのためではありませんか?」

「まあね……でも分かってるでしょ。篭ってたのは私のせいじゃないって」

「……こほん」


ティトはメイドらしく元凶の明言を避けた。

まあ私付きとはいえ、メイドであるティトが身分も立場も私より優る、私の上司に苦言することもできない。

いや、身分や立場を抜いたプライベートなら言うことができるかもしれない。

だが今のティトは、自身にそれを許さないだろうとも分かる。


「シェリー様、本日はお部屋で過ごされますか?」

「そうしようかと思ってたけど、さすがにこれだとなあ。出かけるのは少し億劫だから、午後から久しぶりに庭でも散歩しようかな。テラスでお茶したい」

「畏まりました」


着替えおわってドレッサーの前に座ると、ティトが心得たようにささっと私の髪をまとめてくれる。

ティトの手際は今日も素晴らしい。

少しクセのあるこの黒髪は、自分でまとめようとしてもなかなか手ごわいのだ。


「ねえさまー!」


バンッと扉が開けられ、小さな塊が背中へと突進してくる。

紅筆を用意していたティトは手を動かさなかったので、何とか私は口裂け女になることは回避できた。


「メイディア、おはよう」

「おはようございます! ねえさま、今日はお庭をお散歩するの? わたくしも、わたくしも!」

「メイディア様……またお部屋の外から聞いていらっしゃったのですね」


呆れるティトの視線もなんのその。


きらきらとした妹の笑顔は朝日よりも眩しい。

可愛らしく抱きついてくる甘えた姿に絆され、飛びついてきたことを注意するより先に頭を撫でてしまう。


妹の髪は私の髪と似つかず母に似て、さらっと水のように流れる銀髪。

目は真っ黒の私に似つかず父に似て、蜂蜜のようにとろっとした琥珀色だ。

そして普通顔の私に似つかず、両親に似て美少女。


そう、妹と私に血の繋がりはない。


私はどうしてか11歳の時に日本からこの国に落とされた。

そして落ちた先で偶然出会った夫婦に拾われた。

そして生まれたてのメイディアに懐かれた。


今ではちゃんと家族だ。


「せっかくだから父様と母様も誘ってみようか?」

「ねえさま、ずっとお仕事ばかりでしたもの! きっとよろこびますわ!」


ああ、明るい家と人たち。

みなしごいじめられっ子なあの頃とは大違いだ。

優しい大好きな家族もいて、忙しいけど一応仕事も充実してて。

うん、しあわせだなぁ。




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