92 もう弱いやつと戦うの うんざりなの
パウリーネは、そんなルカイヤに気付くこともなく、もう、次の画面を見ていた。
「なになに、『通称坊っちゃん、正式名称不明』。『ビル・エル・ハルマート』と『アクア3』で0.5ずつ。合計一名か。あ、レーザーブラスター使いか。あんまり興味ないな~。あたし、ショタじゃないし……」
「……」
「やっぱ、相手はレーザーセイバー使いじゃないとね。どれどれ、『ラティーファ・ラフマーン』? あれ? この娘、なんか雰囲気がルカイヤちゃんに似ているね」
「!」
「あ、『ビル・エル・ハルマート』出身じゃん。ルカイヤちゃんと同郷だよ。知ってる子?」
ルカイヤは冷静を装って答える。
「さあ、私は『ビル・エル・ハルマート』は大空襲の後六歳で離れた身なので、詳しいことは分からないんですよ」
「ふーん」
パウリーネはもう関心を失ったようだった。
だが、ルカイヤの風貌は明らかに『ビル・エル・ハルマート』出身者のそれだ。
褐色の肌、パウリーネの金髪と対をなすような銀髪。
ラティーファとの最大の相違点は、ラティーファが170超えのモデル体型なのに対し、ルカイヤは150あるかどうかの身長しかない。
しかし、体つきは筋肉質で、非常に俊敏だ。
そうでなければ、パウリーネの秘書は務まらない。
◇◇◇
データの確認を終えたパウリーネはルカイヤに告げた。
「やっぱさ~。この『旦那さん』て奴がいい。段取りつけて」
「それは先程も申し上げましたが、本部が決めることです」
「そこを何とかするのが、『敏腕美人秘書』の真価発揮じゃーん」
「お言葉ですが、私のことを『敏腕美人秘書』と呼ぶのはパウリーネ様だけです。今までも、パウリーネ様の要望実現に尽力してきたおかげで、私は本部からは『ゴリ押し秘書』と呼ばれています」
「おねがーい、ルカイヤちゃんっ。この通りっ、もう弱い奴と戦うのうんざりなの」
パウリーネはおもむろに背のレーザーセイバーを抜刀した。
それは一ルクスの光も発してない。
「ふうっ」
ルカイヤは小さな溜息をつくと、おもむろに入力を再開した。
「何とかやってみますが、あまり、期待しないで下さいよ」
「さーすが、ルカイヤちゃん。愛してるーっ、結婚しようねー」
ルカイヤは黙って下を向いた。




