89 リア充爆発しろ です
「シナンさん」
シナンが振り向くと、そこには笑顔のエウフェミアが立っていた。
「ごめん。エウフェミアちゃん。ちょっと、今の僕、ダウナー系かも」
「ラティーファさんのこと。結構、本気で好きだったんですか?」
「まあね。初恋だったんだ。でも、ああまで、見せつけられると、さすがの僕も轟沈ですぅー」
「そうかぁ、じゃあ、あたしもワンチャンありかな?」
「へ?」
思わずエウフェミアの顔を見つめるシナン。
「ラティーファさんは大事な友達だし、彼女がシナンさん選ぶなら、仕方ないかなと思ってたんです。でも、そうじゃないなら・・・」
◇◇◇
「!」
「あたしにもチャンスありますよね? 特定の彼女いないんでしょ?」
「う、うん」
シナンは圧倒された。典型的な攻めるに強く、守るに弱いタイプだったようだ。
「良かったっ~。あたし、もうすぐ二十歳になるんですよ。誕生祝においしいお酒が飲める店、連れてって貰えませんか?後、勉強も教えて下さい」
「う、うん」
シナンはエウフェミアに手を引かれ、歩いて行った。
◇◇◇
「あれ?」
アナベルは思わず周りを見回した。
ふと気が付けば、誰もいない。
「ん? ん? ん?」
よく見たら、司会者席のシラネが書類を片付けていたが、あれは既婚者だ。しかも新婚だ。
(ああっ、畜生。こんな時は何て言うんでしたっけ。そうそう、「どいつもこいつもいちゃつきやがって」です。あ、もう一つありました。「リア充爆発しろ」です)
◇◇◇
「学術研究惑星」にある「星間警察」の支部は慌ただしかった。
明日には同じ星系の「副都心惑星」で「偵察局」との「洗脳機関」合同対策会議が開催される。
「偵察局」サイドからは「ビル・エル・ハルマート」と「アクア3」での事例が情報提供される。
それに対し、「星間警察」サイドは「学術研究惑星」での事例が情報提供されることになっている。
この場合、最大のポイントとなり得るのは、逮捕した「洗脳機関」の幹部三名の供述だ。
当初、三名は供述を頑なに拒んだ。
あれだけの数の廃人を出しただけで、極刑は免れにくい。
百歩譲って極刑を免れたとしても、「洗脳機関」の刺客に狙われる身となる。
「星間警察職員」は二つの条件を挙げ、根気よく説得を続けた。
一つ目は「司法取引」による極刑の回避。
二つ目は「星間警察」の護衛による身の安全の保障である。
ここへ来て、ようやく「洗脳機関」の幹部も態度を軟化させてきた。
「もう一歩だ」と言えるところまで来たのである。




