81 やばい 涙腺決壊しそう
悔しいがその通りなのだ。
「旦那さん」=敵との戦闘で「チャージオン」を使い、戦闘不能状態。
「シナン」=敵との戦闘で重傷を負い、後送中。
「ラティーファ」=敵との戦闘で兵器を破損。実質、戦闘不能状態。
「エウフェミア」=敵との戦闘で精神力を使い切り、戦闘不能状態。
「坊っちゃん」=敵との戦闘で精神力を使い切り、戦闘不能状態。
「他の『星間警察職員』及び『偵察局員』」=当初より超心理学技術の兵器に適性を見いだせず、通常兵器しか所有していない。敵の指揮官には通用しない。
◇◇◇
「アナベルさんっ」
ラティーファが叫ぶ。
「ラティーファさん」
「悪いんだけど、十分、いや、十五分だけ時間稼ぎしてっ! あたしにひとつ考えがあるの」
「うん、わかった。頑張ってみます」
ラティーファはアナベルの返事を聞くやいなや、後方の鉄扉から部屋を出た。
◇◇◇
ラティーファは全力で走った。そして、見つけた。
朦朧とした一人のむさい男が徘徊しているところを。
「いたっ!」
ラティーファは足早にむさい男に駆け寄ると、声をかけた。
「旦那さん」
「だんさん?」
(やはり、記憶を喪失していたか、さて)
ラティーファは大きく深呼吸すると、
「そう。貴方は『旦那さん』。あたしは『ラティーファ』」
「ラティーファ?」
「うん」
「ラティーファ…… むさいのを何とかしてくれる人?」
「うんそう」
もう少し、涙ぐみそうになったが、こらえた。何回、やられてもこれは慣れない。
「ゆっくり教えてくれる人?」
「そ、そう」
やばい、涙腺決壊しそう。でも、今回は感慨に耽っている時間はない。一刻も早く連れて行き、アナベルさんを助けなければ……
ラティーファは、もう一度、深呼吸した。




