80 戦略的撤退だ
そこには驚愕の光景があった。
「そんな馬鹿な」
「何故、貴様がいる?」
「星間警察職員」と「偵察局員」から次々怒号が上がる。
そこにはレーザーセイバーを持った敵の指揮官が冷笑を浮かべて立っていた。
「よっ、四人目なの?」
ラティーファも戦慄する。
「貴様らは三人じゃなかったのか?」
一人の「星間警察職員」が怒りの質問をぶつける。
「ふん。失礼な。『指揮官』のうちの誰が三人だと言ったと言うのだ?」
敵の指揮官は冷たく返す。
「それは、捕虜にした貴様らの兵に訊問して……」
「ふん。所詮、『アクア3』の者でしかない兵にどうして本当のことを教えてやる必要がある?」
「貴様ら、初めからこちらが訊問すると想定して、嘘を教えた自分の配下の兵を見捨てて、逃亡したのか?」
「戦略的撤退だ。失礼な」
アナベルを含めた「星間警察職員」、「偵察局員」、それにラティーファは背筋に寒いものが走るのを感じた。
(こいつら、自分たち以外の者は使い捨てにすることしか考えていない……)
◇◇◇
「エウフロシネちゃんはどうしたんですか?」
アナベルが声を絞り出して、質問する。
「あの『人質』のガキか? 安心しろっ。そこのVIPルームで速成のヴァーチャルリアリティマシンにかけてやってるわ。もう、立派な狂信的暗殺者に仕上がっているんじゃないのか」
「なんてことを……」
アナベルは拳を握りしめる。エウフェミアは敵の指揮官を睨みつけるが、レーザーブラスターを撃つ精神力は残っていない。
「怒ったか? 怒ったのなら、かかって来いっ! もう、貴様らの中で超心理学技術の兵器を使えるのは貴様しか残っていないだろう」
敵の指揮官はアナベルを挑発する。
「ぐっ」
アナベルは唇を噛む。




