74 危険な芽は摘まないとな
「な・ん・だ・と……」
シナンはレーザーガンを水平に構える。
「まだ、わからんのか。貴様らのうち、我々に本当に対抗できるのが何人いる? ホタカ・スカイだけだろうがっ!」
「ぐっ」
シナンは唇を噛んだ。
(確かにそのとおりだ。だから、こっちは敵一人につき、二人以上をあてがい……)
「わざわざこっちが捕虜を通じて、三人だと情報を流し、一番厄介なホタカ・スカイを釘付けにした上で、貴様らの戦力を分散させたってことに気づかんのか?」
「!」
シナンは絶句した。
「我々も一人に、貴様らが二人以上のレーザーセイバー使いをぶつけてくるときつかった。だが、その心配はもういらん」
敵の指揮官の言葉に、今度はシナンがうつむいた。
「シナンさん。勝負はやってみなきゃわからないって言ったのは、貴方じゃないですか。エウフロシネちゃんを助けましょう」
今度はアナベルがシナンを励ました。
そんな中、エウフェミアは体の震えを抑えつつ、レーザーブラスターを強く握った。
(何をやってるんだあたしは。みんながエウフロシネちゃんのために戦っているのに、しっかり…… しっかりしなきゃ)
◇◇◇
ラティーファは果敢に敵の指揮官への斬撃を繰り返していた。
坊っちゃんは、敵の指揮官の隙を窺いながら、ラティーファを励ます。
「お姉ちゃんっ! あいつらのやってきたことを思い出してっ! 『ビル・エル・ハルマート』では長老ごと殺されかかった。『アクア3』では、エウフロシネちゃんを拉致して、洗脳しようとした……」
「うん」
ラティーファは更に強くレーザーセイバーを握った。その光は一層強くなった。
「お姉ちゃん。その怒りを相手にぶつけるんだっ!」
坊っちゃんの言葉に、ラティーファは突進。
しかし、敵の指揮官はそれを受け止めた。
(ラティーファ、戦闘は素人だが、間違いなく超心理学技術の才能はある)
敵の指揮官の内心の焦燥を知ってか知らずか、ラティーファは二撃三撃と斬撃を加える。
敵の指揮官は、それを受け止めながら、考えた。
(危険な芽は早めに摘んでおいたほうがいいな)
◇◇◇
アナベルは苦戦していた。
身体能力は高いが、超心理学技術にあまり適性がないらしい。
また、ラティーファに対する坊っちゃんのように、超心理学技術を生かすアドバイスを送るのも、シナンには厳しい話だった。
坊っちゃんのレーザーブラスターと違い、シナンのレーザーガンは、超心理学技術を反映していない。
自分の使ったことのないもので、アドバイスすることは極めて困難だ。
それでも、アナベルは持ち前のファイトで、果敢に敵の指揮官に斬撃を繰り返した。
少しずつだが、レーザーセイバーが光を帯びてきたようにも見えた。




