71 トーシローだな
個室からは老若男女数多くの人は全て救出された。
既に狂信的暗殺者化してしまった者は、連れ出されてしまっていたようで、一行を攻撃する者はなく、みな救出を喜んでいた。
だが、その中にエウフロシネの姿はなかった。
狂信的暗殺者化してしまった者や正規兵になった者は、更に奥の部屋に連れて行かれると聞かされ、エウフェミアの心は曇った。
「いや……」
シナンは話した。
「エウフェミアちゃんの妹さんの場合、敵からすると『大事な人質』だ。そういった意味で奥の部屋に連れて行かれた可能性が大きいと思う」
「そうですね」
エウフェミアは頷いた。
奥には「学術研究惑星」の施設と同様、分厚い鉄扉が待ち構えていた。
◇◇◇
シナンとラティーファは頷き合った。
シナンはレーザーガンの出力を最弱よりやや強く調整すると、ドアノブを狙って撃った。
ドアノブの周辺に小さな穴が開き、ラティーファはゆっくりと扉を開いた。
扉の先には右手にレーザーセイバーを下げた黒づくめの敵の指揮官が一人待ち構えていた。
◇◇◇
「星間警察職員」と「偵察局員」は一斉に射撃する。
敵の指揮官がレーザーセイバーを一閃すると、銃弾はたちどころに蒸発する。
坊っちゃんはレーザーブラスターを放つが、回避される。
(やはり、何か隙を作らないと駄目か)
坊っちゃんは、内心唸った。
「どうした?」
敵の指揮官が冷たい声を発する。
「レーザーセイバーを持っている奴がいるんじゃないのか? 出てこないのか」
ラティーファとアナベルは顔を見合わせる。
だが、やがて、ラティーファは、意を決したかのように前に向かい歩き出す。
「あ」
アナベルは小さい声を発した。
ラティーファは、敵の指揮官と相対すると、レーザーセイバーを中段に構える。
◇◇◇
「素人だな」
敵の指揮官の口調は冷たいままだ。
「お望み通り相手してやるわ。但し……」
ラティーファのレーザーセイバーを握る手に力が入る。
「エウフロシネちゃんを返して貰わないとね」
「エウフロシネ?あの『人質』のガキか。返してほしいってんなら、この奥にいるから行ってみろ。但し……」
「取り戻せるって言うんならな。まあ、取り戻したいと言ったところで、もう、狂信的暗殺者になっちまっているかもしれんがな」
敵の指揮官は冷笑する。
エウフェミアは体から血の気が失せて行くのを感じた。




