69 もう、あれはなしね
旦那さんの上機嫌は、あっと言う間に不機嫌に戻った。
敵が狂信的暗殺者を繰り出して来たからである。
渋々、レーザーセイバーを振り回し、敵の弾丸を蒸発させて行く。
後方から続々と「星間警察職員」と「偵察局員」、更に坊っちゃんが駆け付け、相手の頭部を射撃し始める。
「シナン君っ!」
旦那さんは、不機嫌むき出しでシナンを呼ぶ。
「はい」
「さっきの調子でレーザーガン使って、狂信的暗殺者と後ろに残っている正規兵丸ごとぶちのめせっ!」
その声を聞くや否や、正規兵は隊列を解き、散開する。
狂信的暗殺者はそういった細かい指令は、受け付けられないので、そのままである。
「もう、旦那さん。こっちの戦法を相手に教えちゃ駄目ですよ」
シナンは呆れたように言う。
「それに、ここじゃ近距離過ぎて、最大出力出せませんよ。みなさんの銃と同じ威力で一体ずつ片付けます」
「む~」
旦那さんは苛立つ。
「まあまあ、僕らも出来るだけ頑張って、早く潰すようにするから」
坊っちゃんも宥める。
◇◇◇
狂信的暗殺者は潰滅した。
敵の|正規兵もすっかり数を減らした。
もう一歩で、敵の建物に入るというところで、一人の敵の指揮官が建物の扉から姿を現した。
「うっひょっ~!」
その姿を見るや否や、旦那さんは、レーザーセイバーを振りかざし、敵の指揮官に駆け寄り、斬撃を加える。
走った分勢いがあり、後ずさりしたものの、敵の指揮官は、何とか受け止めた。
「おおうっ! その受け止め方、君、前回、途中でばっくれた人だね。もう、あれはなしね」
敵の指揮官は、旦那さんの言葉には答えず、力勝負に持ち込む。
「力勝負かあ。それならそれも良し」
旦那さんの精神は高揚してきた。
◇◇◇
(うーん)
坊っちゃんは何か引っかかるものがあったが、今回の最大目的はエウフロシネの奪還である。
「ここは旦那さんに任せて、先に進みましょう」
というシナンの言葉に従うことにした。
◇◇◇
建物の扉には鍵はかかっていなかった。
中の間取りは「学術研究惑星」の施設と似ていた。
出入り口付近に会計があり、後は個室がずらりと両側に並んでいる。
最大の相違点は、「学術研究惑星」の時は、シナンとラティーファの侵入と共に、中の人間は、蜘蛛の子を散らすように逃げ出したが、ここは扉が開く様子はない。
慎重に最寄りの扉を調べると施錠されている。
坊っちゃんはレーザーブラスターで鍵を破壊、ゆっくりと扉を開ける。




