61 いいね いいね いいねぃ
後方からゆっくり歩いてくる指揮官に、敵の部隊は道を開けた。
旦那さんはゆっくり左手を上げ、荒くれ海の男たちの射撃中止を指示した。
攻防両軍が固唾を飲んで見守る。
一騎打ちが始まらんとしていた。
旦那さんはレーザーセイバーを背負い直し、静かに再度抜刀した。
それは強い光を帯びていた。
(いいね。いいね。いいねぃ)
旦那さんは、舌なめずりした。
◇◇◇
「いくぜぃっ!」
旦那さんは、指揮官に突進、斬撃を加える。
指揮官は、ガッチリと受け止める。
旦那さんのレーザーセイバーの光が更に増す。
指揮官は、力勝負に持ち込む。
旦那さんは、受けて立つ。
双方の部隊の者たちは、まなじりも動かさず、注視して行く。
◇◇◇
例外はいた。
坊っちゃんである。
不意に両眼を閉じ、気配を窺う。
(やっぱり)
坊っちゃんは、ティモンに耳打ちする。
ティモンは頷くと、坊っちゃんと一緒にそっとその場を離れた。
◇◇◇
その者たちはいた。
船着き場と反対側の海岸から上陸し、建物の中に侵入、更に金庫を丸ごと持ち出そうとしていた。
「何してやがるっ! てめえらっ!」
ティモンは一喝した。
相手方はその言葉には反応せず、代わりに黒づくめの指揮官が前に進み出ると、無言で背負っていたレーザーセイバーを抜刀した。
「くっ!」
ティモンは銃剣を水平に構えた。
坊っちゃんは無言のまま、レーザーブラスターを正面に構える。
睨み合いは続き、敵は金庫持ち出しの作業を続けていた。
◇◇◇
「それ、持ってっちゃ駄目っ!」
一人の少女が金庫に飛び付いた。
「この中にはみんなで一所懸命貯めたお金が入ってるの。持って行っちゃ駄目っ」
ティモンと坊っちゃんは我が眼を疑った。
「エウフロシネッ! 何でここにいるっ?」
ティモンは悲壮な叫び声を上げた。
「みんなと一緒に舟で逃げろって言ったろうっ! 何でここにいるんだっ!」
ティモンの顔面は蒼白だ。
「だっ、だって……」
エウフロシネは涙声になった。
「坊っちゃんが心配で、舟から降りて来たの」
「ぼっ、僕が……」
坊っちゃんは力を落とした。
「ちゃんと言わなかったから、僕は絶対大丈夫だから、安心して、舟で待っててって」




