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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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56 撃つ前に考えようよ

 ラティーファがエウフェミアを安全なところまで送り出している間、シナンは残った個室を精査した。


 どの部屋も、学生が扉を開けっぱなしで逃走したところばかりで、中にはバッグを置きっぱなしなところもあった。


 シナンが中を改めると、学生証とヴァーチャルリアリティの会員証が出て来た。


 (うん。確かにうちの学生だわ。で、こっちが会員証と、1回当たりの入場料がうわ高っ。僕なら10回飲みに行けるよ)



 ◇◇◇



 「シナン君。いる?」

 ラティーファが戻って来た。


 「あ、どう? エウフェミアちゃんは?」


 「うん。だいぶ、落ち着いてくれたみたい。寮に戻ったら『アクア3(故郷)』に通信してみるって。それから、あたしが戻ったら、シラネさんとも話してみたいって」


 「ははは、口の悪さにびっくりすんじゃないかな?」



 ◇◇◇



 「で?このビルの状況は?」

 ラティーファの問いに、シナンは答える。


 「もう1階には誰もいない。開けてないのは、あの奥の鉄扉だけだ。構造上、恐らくあの先に階段かエレベーターがあって、地下か上階に行ける。そこに敵がいる。多分、地下の方」


 「では、行ってみますか」


 「オッケイ」

 返事をするやいなや、シナンはレーザーガンを発射した。


 ズガガガガーンッ


 発射された光球は、鉄扉だけでなく、反対側の壁までぶち抜いた。


 「あっ、そうか。屋内の扉だから、出入り口の時より、弱い威力でいいんだ」

 シナンの言葉に、


 もうもうと立ち込める埃の中で、ラティーファは返した。


 「撃つ前に考えようよ」



 ◇◇◇



 階段とエレベーターは両方あった。


 「どっち使う? って、当然よね」

 ラティーファの問いに、


 「若者は階段だねっ」

 と答えるシナン。


 「そうじゃなくて、エレベーターだと、扉開いた時、狙い撃ちでしょう」


 「気付いていたか。えらいえらい」


 「うわっ、やな奴。さすが学内トップ」


 「そんな~。ちょっとしたお茶目な冗談なのに~」



 ◇◇◇



 地下は1階までにしか降りる階段はないようだ。


 降りた先には、やはり鉄扉があった。


 「今度は慎重にね」

 ラティーファの言葉に、シナンは左側から壁沿いにドアノブに接近する。


 (どうせ開かないだろう)


 そんなシナンの予測と裏腹に、ドアノブは動き、扉は開いた。



 ◇◇◇



 「あんたの乱暴なお仲間が来たようだな」


 部屋の奥には、車内でアナベルを捕縛した男女と椅子に縛り付けられているアナベル。そして、車両の運転手を務めた男がいた。


 もちろん、アナベル以外は、シナンとラティーファには、初対面である。


 アナベルを捕縛した男は銃口を、アナベルの側頭部に当てている。


 アナベルは一見疲れ切った表情をしているが、眼光は死んでいない。


 (たいしたもんだ)

 シナンは感心した。


 「動くなっ! 武器を捨てろっ! アナベル(人質)の命が惜しければなっ」



 ◇◇◇



 アナベルは、シナンとラティーファに眼で合図した。


 ラティーファは、足元にレーザーセイバーを投げ捨てた。


 そして、シナンは……


 左腕を水平に構えると、部屋の奥の壁に向けてレーザーガンを発射した。


 轟音とともに壁が崩壊する。部屋は大きく震動した。


 ラティーファは素早くレーザーセイバーを拾い上げると、振り回し、飛散する瓦礫(がれき)を蒸発させる。


 アナベルは銃口を突きつけた男に頭突きを喰らわせると、素早くシナンたちの方に駆け寄って行く。


 シナンはレーザーガンの出力を最小にすると、アナベルを椅子に縛り付けていたロープを椅子ごと焼き切る。


 「馬鹿野郎っ! てめえら、よりによって、何てことしてくれたんだっ。見ろっ!」

 アナベルを捕縛していた男は後方を指差した。



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