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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第三章 水の惑星Ⅰ

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52/230

52 聞いてて本当の話にしか聞こえなかったよ

 しばしの沈黙の後、星間警察職員の女性は口を開いた。

 「あの、あたし。もう一度、チャレンジしてみます」


 「えっ?」

 驚くラティーファに、星間警察職員は続ける。


 「さっきは淡々とやってしまったんですが、次はあたしはもう限界まで悩んでいて、一刻も早く最新式のAI対応のヴァーチャルリアリティで救われたいとアピールしてみます。後は自分が財閥の重役の娘で、金に糸目をつけるつもりはないとも言ってみます」


 「確かにそう言えば、入れて貰えるかもしれないけど……」

 シナンの懸念は続く。


 「あまりに相手方にとって有利な条件だと、逆に警戒される心配があります。入れて貰えても、そのまま捕縛されるかもしれない」


 「承知の上です」

 星間警察職員は力強く返した。


 「いろいろ言って悪いですが……」

 シナンも続ける。


 「もともと、『星間警察(そちら)』は、こちらがお願いして、応援に来て貰っている身です。どうしてそこまでしてくれるのですか?」


 「それは、あたしも今の『星間警察(うち)』のあり方に疑問を持っているんです。大体、『星間警察(うち)』の上層部は『洗脳機関』に対する危機意識がなさすぎです。『アクア3(スリー)』の件も、『偵察局』に丸投げだし……」


 「『アクア3(スリー)』? 今『アクア3(スリー)』と言いましたか? それに『偵察局』とも言いましたよね?」


 ラティーファの剣幕に、星間警察職員はあわてて自らの口を手で覆う。だが、もう遅かった。


 「そうですか。旦那(だん)さんと坊ちゃんが潜入したのは、『アクア3(スリー)』ですか」

 シナンは淡々と言う。


 「『アクア3(スリー)』は、あたしの大切な友達の故郷なんです。それに『偵察局』にも、よく知ってる人間がいるんですっ」

 ラティーファは対照的に興奮気味だ。


 「そこまでご存知なんですか。仕方ないですね。貴方たちの言う通りです。『アクア3(スリー)』には『洗脳機関』の活動の形跡があり、『偵察局員』が調査のため、潜入しています」

 

 「そうだったんですか」

 (うなず)くシナン。


 「なんてこと。エウフェミアちゃん、可哀そう過ぎるよ。本当に許せないっ。『洗脳機関』!」

 ラティーファは怒りをあらわにする。


 「やりましょう。貴方たちは、もう同志です。あたしの本当の名前は『アナベル』。ラティーファさんと同じ19歳です。ただ、今回は先程言った通り、あたしは『エマ』です」



 ◇◇◇



 それから、「エマ」こと「アナベル」は、迫真の演技を見せ、ついにはアポを取り付けた。


 「15時に『ギャラクシーキャピタル銀行』の前で待ち合わせだそうです」

 アナベルは疲れの色を見せながらも、達成感のある表情で二人に報告した。


 「アナベルさん。凄い。あたしは聞いてて本当の話にしか聞こえなかったよ」

 ラティーファは感心した。


 「で、どうします? あの辺一帯に、星間警察の皆さんにいて貰いますか?」

 シナンの問いに、アナベルは淡々と答えた。


 「相手方もアジトの近くを待ち合わせ場所にすることはないでしょう。多分、車両で移動させられると思います。そうなると、あたしの発信機が、銀行前から移動した段階で、追跡を開始した方がいいですね。目立たないように車両を隠しておく必要もあります」


 アナベルの答えに、シナンは考え込んだ。

 「そうなると、そう何台も出せませんね。目立てば、相手方が警戒して、アナベルさんとの接触を回避する可能性が出てくる」


 「そういうことです。ただ、貴方たちには近くにいてほしいですね。信頼してますよ」

 アナベルは微笑した。


 「武器はどうします?」

 シナンは更に質問する。


 「何も持たないで行きます。相手を警戒させないように」


 「でもそれでは、あまりにも」


 「大丈夫です。貴方たちを信頼してますから」

 アナベルはまた微笑した。



 ◇◇◇



 「発信機と武器を差し出してもらおうか」


 走行中の車内の後部座席では、アナベルが右側の隣席の男から首元に銃を突きつけられていた。


 「……」

 (何でこんな早くばれたんでしょう)

 アナベルは内心焦燥したが、相手のハッタリの可能性も感じ、まだ、演技を続けることことにした。


 「発信機? 武器? 何のことでしょう? それより、わたくしを一刻も早くこの悩みから救いだしてください」


 ガコッ


 隣席の男は銃を持った手ごと、アナベルの下あごを殴った。


 「ぐっ」

 思わずアナベルはうめき声を上げた。



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