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チャージオン~光らせたい男と不器用な女のお話  作者: 水渕成分
第二章 砂の惑星Ⅱ

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31 あ~もう、訳わかんない

 チャージオンを放ったシラネは、右手に柄だけになったレーザーセイバーを握りしめると、一目散に北側に向かい、走り出した。


 「あーっ、シラネさん。どこへ行くんです」

 兵たちの声を、ミラーは制した。


 「みなさん。シラネさんは私が何とかします。みなさんはいまのうちに敵兵を攻撃して、追い払って下さい」


 兵たちは(うなず)き合い、攻撃軍への射撃を開始した。



 ◇◇◇



 しかし……


 ミッドラント駐在所の衛兵たちは、驚愕の光景を見ることになる。


 「うっ、くくくくっ」

 (うな)り声を上げながら、攻撃軍の前面に立ったのは、黒ずくめの男だった。


 黒ずくめの男も無傷ではなかった。


 よく見ると左腕がなかった。

 

 左足も膝から下がなかった。


 だが、右手にしっかりとレーザーセイバーを(つか)み、一本だけの右足でしっかりと立っていた。


 「やってくれたなぁ~。こいつは高くつくぜぇ」

 黒ずくめの男は凄まじい形相で、レーザーセイバーを円形に一閃させる。


 ミッドラント駐在所の衛兵は声も上げず、倒れて行く。


 「もう、宙港の資料なんざどうでもいい。ここは破壊し尽くせっ」

 黒ずくめの男は低い声で、新しい命令を下した。



 ◇◇◇



 次の瞬間、一筋のレーザーが走り、黒ずくめの男の顔面を直撃した。


 「なっ、何だ?」

 それが、黒ずくめの男の最期の言葉だった。


 黒ずくめの男は、今度こそ光に包まれ、その姿を完全に消した。


 攻防両軍ともしばらく唖然(あぜん)としたままだった。


 だが、我に返った者から順にレーザーの発射された方向を振り返る。


 「みなさん。遅くなって申し訳ないです。ミッドラントCEOの派遣した援軍の者です。私は指揮官(コマンダー)のシナンです。第8拠点の首長をやってました」


 ミッドラント駐在所の衛兵たちから歓声が上がる。


 逆に攻撃軍は大きく気落ちしていた。


 シナンはそれを見ると、左腕を上に向けた。


 よく見ると、彼の左腕はレーザーガンと一体化している。


 中空に向けて、レーザーガンを発射する。大きな轟音が響いた。


 「攻撃軍のみなさん。今すぐ武器を捨てて、投降して下さい。貴方たちだって、もともとこの惑星(ほし)の人でしょう。他から来て、ここに違法なAI対応のVR性風俗施設を作ろうとしている者に、いつまでも忠誠を誓う義理はない」


 シナンの言葉に、大半の者が武器を捨て、投降して行った。


 ミッドラント駐在所の衛兵たちは、抱き合って喜んだ。


 「勝った。俺たち勝ったんだよ」

 「良かった。本当に良かった」



 ◇◇◇



 「そう言えば、所長とシラネさんは?」

 誰かが気付いた。


 「シラネさんがチャージオン(あの技)出した後、急に北に走り出して、それを所長が追いかけて、その後、どうなったんだ?」


 何名かの捜索隊が組まれた。


 そして、対象人物たちは、あっという間に見つかった。


 「離せ~。あっちに敵がいる~。あたしはあっちに行く~」

 叫びながら、手足をじたばたさせているシラネとそれを後ろから羽交い絞めにしているミラーをである。


 ついさっきまで、命を懸けて、過酷な戦闘をしていた者と同一人物とは思えない光景。


 捜索隊は、これはこれで茫然(ぼうぜん)とした。


 しかし、一人の者がすぐに言った。

 「所長。『お手伝い』しましょうか?」


 「うーん」

 ミラーは少し考えてから答えた。


 「いや、いいです。私も腹を(くく)りました。貴方たちのおかげで駐在所も守れたようだし、伏せていた感情を出しましょう」


 ミラーは、シラネを羽交い絞めにしたまま、大きく息を吸い込むと言った。


 「シラネさん。私と結婚して下さい」


 ピタリとシラネのじたばたが止まった。


 ついでに、捜索隊全員の動きも止まった。


 ただただ、静寂が訪れた。



 ◇◇◇



 だが、それは長くは続かなかった。


 静寂を破る大きな声が後ろから聞こえてきたからだ。


 「ちょっと待った~」


 大きな声の主は、先程、再登場を果たしたばかりのシナンだった。


 「シラネさんっ。僕はやっぱり強い女の人が好きですっ。僕も死にそうになって、サイボーグ手術を受け、強くなりましたっ。僕と結婚して下さいっ」


 (えーと)

 捜索隊全員は硬直したままだった。

 (何だろこれ? 銀河中央でやっているバラエティー番組のロケ?)


 捜索隊員ですら、この状態であるから、シラネの心中は無茶苦茶だった。


 (ななな、何、この状況? 彼氏いない歴25年にして、初めて到来したモテキ? このあたしを二人の男が取り合う乙女ゲー? でも、シナン君、こないだ、ラティーファちゃんが好きだって言ってなかった? あーっ、もう訳分かんないっ)


 シラネは卒倒した。


 「これはいけない。私がおぶって、駐在所まで連れて行きます」

 ミラーの言葉に、


 「いえいえ、所長のお手を(わずら)わすのはいけない。僕がおぶって連れて行きます」

 と返すシナン。


 二人の間を流れる緊張感に耐えかねた捜索隊員の一人が恐る恐る申し出た。


 「あの~。こんなこともあろうかと、担架を持って来てあります。これでお二人で運ばれては?」


 「やむを得ませんね。それでいいですか?シナン君」

 ミラーの問いかけに、


 「今日のところは、それで手を打ちましょう」

 とシナンも応じた。


 かくて、シラネは衆人環視の中、前はミラー、後ろがシナンが持つ担架で運ばれて行った。


 シラネは内心思った。

 (は、恥ずかしい。何、この罰ゲーム。あたしの周りの男には変人しかいないの?)


 ミラーは、運びながら思い出した。

 (そう言えば、こちらは勝てたので忘れていましたが、第12拠点は? 場合によると、援軍を送らないと)



 ◇◇◇



 第12拠点では、旦那(だん)さんが苦戦を続けていた。


 黒ずくめの男たちは、決して同方向から攻撃せず、別方向から攻撃した。


 旦那(だん)さんは、根気強く防戦し、二人の黒ずくめの男が一直線に並ぶチャンスを待ち続けた。


 縦か横に一直線に並んだ時、チャージオンをかけ、一度に二人を倒す作戦である。


 しかし、黒ずくめの男たちは、その作戦を読み、決して同方向から攻撃しようとしなかった。


 旦那(だん)さんには、疲労が蓄積して来ていた。



 ◇◇◇



 ラティーファは、武器庫でそれを見つけた。


 そして、右手にそれをしっかり握り、拠点の出入り口に向けて、走り出した。


 坊っちゃんは異変に気付いた。


 (まさか)


 坊っちゃんも、拠点の出入り口に向かった。



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