225 後日譚 坊っちゃんとエウフロシネⅡ
坊っちゃんは、アナベルとオキニィの存在に気付くと声をかけた。
「あ~、来てくれたんですね。もうちょっとで休憩時間になるので、応接で待っていて下さい」
「は~い」
アナベルも返事をする。
「応接、こっちです~」
エウフロシネが案内する。
やがて、時をおかず、坊っちゃんが応接に現れる。
「お久しぶり。坊っちゃん。いや、こんな好青年を『坊っちゃん』なんて失礼だよね」
アナベルは苦笑する。
「いえいえ。『坊っちゃん』でいいんですよ。ここの生徒さんたちは僕のこと『先生、先生』言うもんだから、昔から知ってる人が『坊っちゃん』って呼んでくれると嬉しいんだ」
坊っちゃんも笑顔で答える。
「そう言えば、名前を付けたんだっけ?」
「うん。エウフロシネと結婚するのに、名前なしの通称『坊っちゃん』じゃ困るんで、今の本名は『シヴツ・スカイ』です」
「えっ? 『スカイ』って?」
「そう、旦那さんの養子になったんです」
「そう」
アナベルの中に様々な思いが去来した。
「僕もいろいろあったけど、今は何とか楽しくやっています。結婚もしたし…… ところで、ラティーファには、もう会ったんですか?」
坊っちゃんの問いに、アナベルは笑顔で答える。
「まだ、この後なの。楽しみだな」
「ははは、一番のお楽しみは最後にとっておく方ですか?」
「そういう訳でもないけど、坊っちゃんとエウフロシネちゃんにも会えたし。偵察局勤務10年目でやっと取れた長期休暇だけど、『アクア3』に来て良かった」
「『ビル・エル・ハルマート』は遠いけど、『アクア3』は首都星系からそんなに離れてないんだから、これからもちょくちょく来てくださいよ。訓練学校だって、偵察局の一機関なんですから」
「うん。そうする。坊っちゃんとエウフロシネちゃんも首都星系に来たら、寄ってよ」
「そうします」
最後にアナベルとエウフロシネ、坊っちゃんとオキニィはそれぞれお互いに固い握手を交わした。




