201 脳みそにカビが生えてるんじゃないですか
ルカイヤの放った狙撃は順に相手の右足の甲、左足の甲、右手の甲、左手の甲を射抜き、相手は動きが取れなくなった。
「殺せっ!」
叫ぶ相手に、ルカイヤは笑みを絶やさずに続ける。
「あら、聞こえなかったんですか? 『殺しはしない』と言ったんですよ。聞きたいことがあるんです」
「俺は下っ端だ。何も知らない」
「安心して下さい。難しいことは聞きません。貴方が上層部からどんな命令を受けたか聞きたいだけです」
「『宙港を守れ』。それだけだ」
「ふーん」
笑みを続けながらも、ルカイヤの眼光が光る。
「それだけではないでしょう。他にもあるはずです」
「それだけだ」
パスッ
ルカイヤがレーザーブラスターを軽く発射する。
相手の男の左の耳たぶの先端と髪の毛の一部をかすめる。
髪の毛が焦げた匂いが広がる。
「舐めないでくださいな。これでも『洗脳機関第五軍団長』の秘書だったんですよ。『洗脳機関』のやり方は熟知しています」
「分かっているなら、聞く必要ないだろっ!」
パスッ
今度は相手の男の右の耳たぶの先端と髪の毛の一部をかすめる。
「覚えておいて下さい。物事には何でも裏付けというものが必要なのです」
「……」
「安心してください。『洗脳機関』と違って、『銀河帝国偵察局』は投降者の人権を保障します。この私が生きた証拠です」
「と、特別命令が出た」
「ほう。どういったものですか?」
「『Stand or Die』だ」
「…… やれやれ、そこで立って戦えない奴は死ねですか? 脳みそにカビが生えてるんじゃないですか? 『洗脳機関』の上層部は」
「これでもう俺は『洗脳機関』には帰れない。命は助けてくれるんだろうな」
「言ったでしょう。約束は守ります。武器をこちらに渡して、おとなしくしていれば、こちらも危害は加えません」
「分かった」
相手の男はレーザーブラスターをルカイヤに渡した。
「坊っちゃん。私はこの調子で相手方を投降させて回りますから、ここで見ていてもらえますか」
「分かったよ。ルカイヤさん」
ルカイヤは相手の男に念を押した。
「言っときますが、この坊っちゃんはあなた方の30人くらいは平気で一人で倒す実力を持っています。くれぐれも変な気を起こさないように」
「分かっているさ。あんたがたの強さは。誰がそんな化け物たちと率先して戦いたいもんか」
「賢明なお考えですね」




