189 口の悪い人ってやあねぇ
「さあて、あたしはまだまだ平気だが、うちの乗員が大変だ。そろそろ、撃墜してちょうだいよ」
シラネのその言葉に応えるかのように、味方戦闘機が1機敵戦闘機を撃墜する。
「よっしゃあ~、これで数的優位に立った~」
その言葉どおり、味方戦闘機は敵戦闘機を追い詰め始め、遂には3機全てを撃墜した。
翼を振って、おとりになったことへの感謝を示す味方戦闘機をシラネは怒鳴る。
「どアホウっ! そんなことしてる暇があったら、敵の対空砲を完全に黙らせろっ!」
「まあ、口の悪い方ってやあねぇ」
旦那さんは隣の坊っちゃんに話しかける。
思わず苦笑する坊っちゃん。
「兄貴~、聞こえたぞ。後で覚えてろっ!」
「記憶にございません」
「てんめぇ~、ぶっ殺すっ!」
(不思議だ。この兄妹といると恐怖や不安が消えて、何とかなるような気がしてきてしまう)
アナベルはふとそんな気持ちになった。
◇◇◇
そうは言っても敵の対空砲火を完全に沈黙させることは難しい。
対空砲火をものともしない戦闘員。すなわち、旦那さん、坊っちゃん、シラネ、そして、ルカイヤの4名が先行して、空挺降下して、宙港を制圧する。
輸送機は宙港制圧後、そこに着陸する。
「これで行く」
シラネの説明にアナベルが手を上げた。
「ちょっと待って下さい。私も行きたいです」
「!」
シラネはアナベルの真っ直ぐな視線に目を向けた。
「アナベルちゃん。本当に大丈夫か?」
「はいっ」
アナベルは直立不動のまま、力強く答えた。
「よしっ、5人で行くっ」
シラネの新宣言に今度はオキニィが手を上げた。
「僕も行きたいです」
「ふむ」
シラネは少し考えた後、回答した。
「オキニィの意欲は嬉しく思う。だが、対空砲火を完全に沈黙させることが出来ない以上、どうしても、優秀な操縦士は必要だ。あたしが空挺降下する以上、それはオキニィしかいない。すまんが頼む」
「そうですか……」
オキニィは見るからに意気消沈した。
(全くアナベルちゃんに気があること、分かりやす過ぎなんだよな)
シラネはすぐにオキニィに耳打ちした。




