186 座して死を待つより打ってでる
「危険過ぎる。ルカイヤは相当な覚悟でくるだろうし、『偵察局』の奴らも出張ってくるぞ」
「逆に一気に殲滅するチャンスだ。これを逃して一発逆転の機会はない。勝てればまた『銀河帝国』内で稼げるようになる」
「やるのか?」
「ああ、座して死を待つより、打って出よう」
「分かった。イワノフがそこまで言うなら、我々もやろう」
◇◇◇
「惑星『バストーニュ』にパウリーネがいる?確かな情報なのか? それは?」
シラネの問いに偵察局長は重々しく答える。
「あの周辺の惑星で噂が流れていて、噂の元をたどるとどうも『洗脳機関』なんだ」
「ふーん」
シラネは考え込む。
現在の彼我の立場を比較して、この情報の真偽を考えてみる。
(惑星『バストーニュ』をおとりにして、他のものを取りに来るのはありえない。難攻不落の要塞であるあの惑星以上に価値があるのは首都星系くらいだ。首都星系に手を出せば『開戦』だし、第一、兵站線が維持できない)
(『洗脳機関』が惑星『バストーニュ』を舞台に決戦したがっているのは間違いない。だが、決戦したがっている理由はなんだ? 明らかに戦況はこちらが優勢だが、それだけでは惑星『バストーニュ』を賭けてまで決戦する理由としては考えにくい。
「局長。他にどんなことでも、未確認情報でいい。何か『洗脳機関』に関する情報はないか?」
偵察局長は一瞬逡巡したが、やがて、意を決したように口を開いた。
「これはトップシークレットだ。絶対、他言するな」
「もちろんだ」
「『銀河連邦』書記長の病状がかなり良くないらしい。いつ死んでもおかしくないそうだ」
「!」
「『銀河連邦』では書記長の代替わりに伴い、相当量の組織改編があるのではないかと噂になっているそうだ」
「それだ。繋がった!」
(ルカイヤちゃんが『銀河帝国』に投降してから、『洗脳機関』の実績は著しく良くない。もともと、非合法な組織だし、整理対象となっている可能性は高い)
(それならば、乾坤一擲の決戦を挑んでくるのも分かる)