170 ビンゴ! うちの仕事
今回のことは、「偵察局」主導の活動ではなく、「バストーニュ防衛軍」サイドからシラネの派遣の依頼があり、それを受けた形である。
結果として、事実上、惑星「バストーニュ」が「銀河連邦」の傘下である「洗脳機関」に乗っ取られてしまうことになった。
だが、それも「洗脳機関」内部の内輪もめと言えなくもない。
それに乗じて「偵察局」が惑星「バストーニュ」の支配権を奪取できれば、それに越したことはなかったが、単なる外交使節として最低限の人数で行った以上、それは困難であろう。
以上のことから「偵察局」が皇帝より今回のことで叱責を受けることもなかった。
但し、「銀河帝国」は「銀河連邦」に対して、外交ルートを通じ、惑星「バストーニュ」の施政権の早期返還を申し入れた。
「銀河連邦」側の回答は施政権の返還は前向きに検討したい。しかし、惑星「バストーニュ」内部が混乱しているので、しばしの猶予をもらいたい…… だった。
◇◇◇
「要するにだらだらだらだら引き延ばして、なし崩しに惑星『バストーニュ』の支配を既成事実化したいんじゃないの? 『洗脳機関』は」
シラネの推測に、偵察局長も頷く。
「それはある。だが、皇帝陛下も気にされてい『それは許すな』と言っている」
「かと言って、本格的に航宙軍を使っての奪還作戦もできんでしょ?」
「冗談抜きに『次の大戦争』の導火線になりかねないからなー」
「となると」
「ビンゴ! 『偵察局』の仕事」
「まあ、状況は悪いばかりでもないけどね。ルカイヤは手に入ったし」
「実際どうなんだ? ルカイヤは『偵察局』に協力してくれそうなのか?」
「一つの条件をうちが飲めば、全面協力してくれると思う」
「それは何だ?」
「パウリーネの救出」
「それかあ。だが、パウリーネが惑星『バストーニュ』にいてくれればいいが、『銀河連邦』国内に連れ去られたら、かなり難しいぞ」
「それでも、やる価値はある。実際、惑星『ウィルツ』を奪還した時、ルカイヤがわざと『洗脳システム』を破壊せずに残していってくれたおかげで、今、洗脳された者を回復させるプログラムの作成が進んでいる。それに、ルカイヤが作ったレーザーセイバー使いの養成教程は、『偵察局』のそれよりはるかに優れている」
「そうだな。こっちでもいろいろ調べてみるよ」
「頼む」