167 ここは俺が退治してこよう
「まあ~て、まてまてまて~い」
それを遮ったのは旦那さんだ。
「せっかくの『航宙艇』を傷つけられてはいけない。ここは俺が退治してこよう」
言うが早いか、航宙艇を飛び降りる。
「わっ、旦那さん。てめえ、戦闘したいだけだろう。この野郎っ! 坊っちゃん、敵の『指揮官』は何人だ?」
「えーとね。三人」
「旦那さんがあ。『チャージオン』する気だな? すまん、坊っちゃん、オキニィ。回収してきてくれ」
「うん。そういうの僕の役目だし」
「『チャージオン』した人、回収するの初めてです」
開き直る坊っちゃんに比べ、心なしかオキニィは少し楽しそうでもある。
◇◇◇
「おおりゃあ~」
溜まった鬱憤を吐き出すかのように、旦那さんは、三人の「指揮官」を向こうに回し、戦況で圧倒していた。
「あれ?」
坊っちゃんは意外そうだ。
「これはひょっとすると……」
初めこそ三人の「指揮官」は旦那さんの斬撃を辛うじて受け止めていたが、すぐに受け止めきれなくなり、尻もちをつきだした。
「え? 旦那さん?」
坊っちゃんの疑問をよそに、旦那さんはレーザーセイバーを大きく横に薙ぎ払い、三人の「指揮官」は蒸発した。
戦闘開始から十五分も経っていない。
◇◇◇
「足りない……」
その場に立ちすくむ旦那さんを坊っちゃんも呆然と見ていた。
もちろん「チャージオン」していない。
そこにシラネの怒鳴り声が響く。
「何、やってんだっ! てめえらっ! 敵を倒したなら、とっとと『航宙艇』に乗れっ!」
坊っちゃんは我に返った。
「そうだ。旦那さん、オキニィさん、戻ろう」
「はい」
オキニィは立ちすくむ旦那さんの手を取り、「航宙艇」に誘導した。