166 兄貴に任せると撤退にならない
「いててて」
「何やってんだっ! 兄貴っ! とっとと引き上げるぞっ!」
シラネは旦那さんに一撃を加えると、襟首を掴むと後ろに引っ張った。
「坊っちゃん。悪いがしんがりを頼む。旦那さんに任せると撤退にならない」
「だよね~。僕もそう思うよ」
坊っちゃんはレーザーブラスターを構えた。
◇◇◇
「さすがに数はいるねぇ。バストーニュ防衛軍の人たちより訓練度はだいぶ落ちるけど……」
坊っちゃんは左腕で額の汗を拭った。
「坊っちゃんさん。お待たせしました」
「あっ、オキニィさん。航宙艇の準備は大丈夫?」
「はい。もう、シラネさんがエンジンをかけています。アナベルさんはルカイヤさんを見ています。バストーニュ防衛軍もしんがりの方たち以外は搭乗しました」
「じゃ、オキニィさんは?」
「はい。『大砲』として来ました」
オキニィは笑顔を見せると、右腕をまくって見せた。
ついている場所はシナンと逆だが、レーザーガンだ。
「行きますよ。出力最大」
オキニィが右腕を水平に構える。
気付いた「指揮官」は左右に回避するが、普通の兵員は対応できない。
「発射っ!」
巨大な太く白い光線が敵陣を襲う。
◇◇◇
敵陣は中央部がえぐり込まれるように崩壊した。
「よしっ、今だっ! 航宙艇に乗るよっ!」
坊っちゃん、オキニィ、それにバストーニュ防衛軍のしんがりは航宙艇に急いだ。
◇◇◇
「よーし、全員乗ったなっ! 動くぞっ!」
シラネは声をかける。
航宙艇が離陸に向け、ゆっくり動き出すと、機体に軽い衝撃が走った。
「ん? 何だ?」
シラネの疑問に、坊っちゃんが答える。
「姐御っ! 敵の『指揮官』がレーザーブラスターでこっちの機体を撃ってるよっ!」
「何~、しつこい奴らだな。だが、ここは強行突破だ」