159 やれやれ舐められたもんだぜ
「ここまでやったら、『開戦』ということは承知してやってるんですね?」
ルカイヤの問いに、イワノフは笑ったまま答える。
「そんなことは、貴様とパウリーネを殺害又は投獄してしまえば、いかようにも出来るわ。『勝てば官軍』だっ」
「みなさん。宙港に向かいますよ」
ルカイヤは指令を出すが、ソローキンはそれを許さない。
「そうはいかんな。『指揮官』全員、前に出ろ」
「私も釘付けにしようというのですか? だけど、そちらのレーザーセイバー使いは七人。こっちは十人ですよ」
「やれやれ。舐められたもんだな」
イワノフはおもむろにレーザーセイバーを背から抜刀する。
「!」
「知らなかった訳ではあるまい。わしもソローキンも先の『大戦争』の時から工作員だということを」
「……」
◇◇◇
窓の外では白い光が増してきている。パウリーネの「チャージオン」が近いのだろう。
「パウリーネ様が『チャージオン』すれば、貴方の部下の三人の『指揮官を倒します。制止するなら、今です」
ルカイヤの進言を、イワノフは鼻で笑った。
「パウリーネが『チャージオン』すれば、困るのは貴様だろう。こちらは戦死者が十名になり、軍団の実績になる」
「死者数が実績? やはり、貴方がたとは全くもって、相容れませんね」
「減らず口を叩けるのも今のうちだけだっ!」
イワノフはレーザーセイバーを振りかぶった。
◇◇◇
「チャアアァジイィィオオォォォンッ」
パウリーネの雄たけびが上がり、外は真っ白い光に包まれた。
「やった」
イワノフは歓声を上げた。
「よしっ! 今のパウリーネはただの記憶喪失者だ。捕縛して本部へ送り返せっ!」
「そうはさせませんっ!」
あわてて駆けださんとするルカイヤをイワノフのレーザーセイバーが襲った。
「おっと、あんたの相手はこっちだぜ」
「くっ」




