144 あんな下世話なものは破壊する価値もありません
「副官は先の戦闘で負傷し、自らの意思でサイボーグ化して、早期の復帰を果たしたオキニィ。『サン・ヴィット』への空挺降下作戦のコードネームは『パレンバン』」
「『パレンバン』? 『偵察局』の皆様も随分冗談がきついですね」
「ウィルツ」への空挺降下作戦のコードネームはかつて失敗したとされる作戦名「マーケット・ガーデン」。「サン・ヴィット」への空挺降下作戦のコードネームは成功したとされる作戦名「パレンバン」。
「そういうことだよ」
「ふふふ。『ウィルツ』への空挺降下はあくまで陽動作戦。私らは見事にひっかかったという訳ですか。失礼ですが、今回の作戦の策定は坊っちゃん、貴方ではないですね?」
「もちろん。僕にこんなことは出来ないよ。立案はアナベルさん。最終策定はシラネ・スカイだよ」
「ふふふ。やはり、そうですか」
◇◇◇
ルカイヤは坊っちゃんに銃口の照準を合わせつつ、矢継ぎ早に指示を出す。
「工場にいる部隊は、直ちに『宙港』に回り、その防衛に加わって下さい。レーザーセイバー使いを含めた全員がです。ここはパウリーネ様と私だけで十分です。但し、撤退する際に私の作成した戦闘員養成教程は全部破壊して行って下さい」
「『狂信的暗殺者養成のための洗脳システム』は破壊しなくていいかですって。ふん。あれは私が作ったものじゃありません。あんな下世話なものは破壊する価値もありません。放っておきなさい。これは命令です」
 




