128 うん いけるよ
「いる」
アナベルは気が付いた。
一見、稼働しなくなった小さな工場だが、中から強い者の気配が伝わってくる。
レーザーブラスター使いの五名もその気配を感じ、工場の入り口周辺に散開する。
アナベルとオキニィもそのすぐ後ろに陣取ったが、地元警察の二十名は更にその後方の距離を取ったところで停止した。
(おかしい)
アナベルは焦燥した。
(『学術研究惑星』では地元警察はこんな非協力的ではなかった。首都星系外ではこうまで意識が低くなるのか……)
(だが、悩んでいる時間はない。『洗脳機関』との戦闘で、こちらが優勢とわかれば、手柄ほしさに協力して来るだろう。それを期待しよう)
レーザーブラスター使いが工場の扉に向け、発射する。
扉の一部が溶解する。
それを合図に工場の窓から応射が始まる。
(『洗脳機関』は、レーザーブラスターじゃない。普通の銃弾だ。いけるっ!)
アナベルは内心喜んだ。
◇◇◇
双方の射撃戦は数的に『洗脳機関』側が多かったものの、射程距離の長いレーザーブラスター五挺を要する『偵察局」側が徐々に優勢になっていった。
「偵察局」は少しずつ「洗脳機関」の拠る工場に接近し、時にはその壁を一部破壊した。
様子見だった地元警察の者もゆっくりと前進しだした。
(うん。いけるよ。勝てるっ!)
アナベルの期待は膨らんだ。
◇◇◇
工場の扉から二人の「偵察機関」の「指揮官」が姿を現す。
(よしっ!)
アナベルは気合を入れた。
(訓練の成果を見せる時が来た。ここで勝てれば、任務完了だ)
アナベルが勢いよく抜刀したレーザーセイバーは煌々と輝いていた。
対照的にオキニィは静かに抜刀した。
そして、そっと警報シグナルのスイッチを入れた。
(取り越し苦労だったら、僕が責任をとればいいことだ……)




