124 あいつら本当に融通がきかない
(無事、『先行潜入チーム』は各惑星に入ったようですね)
ルカイヤは画面を確認する。
(次はヴァーチャルリアリティマシンの搬入を目立たないように進めます……)
(後は『偵察局』の出方によって、『指揮官』の配置の数を変動させます。勝つ必要はありません。負けない数を配置します。『偵察局』が最強カードの旦那さんプラス坊っちゃんを切ってきたら、こちらもパウリーネ様と私が出て、引き分けに持ち込みます)
(その間もヴァーチャルリアリティの活動を続けられれば、いずれはその惑星を軍事的に制圧できます。そうなればこっちの勝ちです)
(ふっ、さんざん、第五軍団は軍団長も秘書も小娘だと言ってくれた第二軍団の方々、目にもの見せてあげましょう)
◇◇◇
「『洗脳機関第五軍団』の拠点惑星『サン・ヴィット』。『銀河連邦』との勢力境界線ギリギリに位置する。惑星全体が深い森林に覆われている。また、『銀河連邦』の援助を受けていると推測される反政府勢力も存在し、本格的調査は困難が予想される。うーん」
「その周辺の惑星『ヴィールサルム』『ウーファリーズ』『クレルボー』『ウィルツ』。この四つが今回『洗脳機関第五軍団』が『指揮官』を潜入させるとされている。中でも『ウィルツ』は地元警察からそれらしき形跡が確認されたと報告あり……か」
「どう思う? シラネ君」
偵察局長の問いに、シラネは少しだけ間をおいて、答える。
「信憑性は十分あると思う」
「そうか。どういう点で?」
「この情報を知らないより、知ってた方がはるかにいいっては事実だが、こっちがこうやればいいですよってとこまでお膳立てはされていない。ありのままの素材がそのまま出された感じだ。こっちをこういう形に導きたいという誘引力を感じないんだよ」
「つまり、罠にはめるための誘導性がないということか?」
「そういうことだね。だけど、この五つのどこかに旦那さんと坊っちゃんをいきなり投入する訳にはいかないよね」
「そうなんだ。投入してみてから、『洗脳機関第五軍団』の本命が他の惑星にあると分かった時、あいつら、本当に融通利かないから」
「はっはっはっ、それがあいつらなんだけどさ。そうだな。思い切って、レーザーセイバー使いの訓練生使ってみるかい?」
「大丈夫か?」
「もちろん。慎重を要する。レーザーセイバー使いを二人に、レーザーブラスター使いを五人。更に、『洗脳機関第五軍団』がこないだみたいにいきなり乗り込んで来た時、対応出来るよう旦那さんと坊っちゃんを一日で行ける範囲に待機させとく必要もあるだろう」
「分かった。それと危ない時はすぐ撤収だな」
「その通り。あたしもさんざん訓練生に言ってやった。作戦がうまく遂行出来ないからって、命を無駄にするような奴は、何回生まれ変わろうが二度とあたしの教え子にしないってね」




