107 変な習癖ついたら困るな
「とにかく…… 他人を教えられないからと言って、勝手に『自習』とか言って、魚取ってんじゃないの! 子供じゃないんだから、ちゃんと相談しなさい」
「はっ、はいぃぃぃ」
ラティーファは最後に軽く背筋を伸ばす。
「ぐっ」
旦那さんの短い悲鳴を聞くと、ラティーファはようやくホールドを外した。
「さぁっ! 『人材育成機関』に行くよっ!」
ラティーファは右手で旦那さんの左手を掴むと、建物に向かい、走り出した。
(ふぅっ、何とかなったか、それにしても……)
ラティーファはふと思った。
(なんかホールドかけてる時、妙に気持ちよかったな…… いやいやいや……)
(妙な習癖がついても困るな。これはここまでっ!)
◇◇◇
勢いよく走って行くラティーファと旦那さんを見て、シナンとエウフェミアもあわてて走り出した。
「ふっ」
シナンは小さく笑った。
「やっぱり、あの二人は、あの二人じゃないと駄目なんだな」
「今回も見ていて驚きましたが、あの二人ってなんかピッタリって感じで」
エウフェミアも笑った。
「そうだね」
シナンは頷いた。
◇◇◇
今更ながら、旦那さんは「他人を教えられない」現実を受け入れないと次へ進めない。
「剣術訓練コース」にはラティーファが補助に入り、坊っちゃんも可能な限り、精神力面での指導のため、臨席することとした。
「射撃訓練コース」は坊っちゃんが不在になる分、シナンとエウフェミアがフォローすることとした。
「う~ん」
坊っちゃんは唸った。
「射撃訓練コース」はそれなりの成果を得たと言っていいだろう。
しかし、「剣術訓練コース」は……
「『レーザーセイバー』はその何と言うか、『才能』が占める部分が多いんですよ。僕が持ってもどのくらいの『持てる性能』が引き出せるか、自信がないです」




