102 輸送機の扉が開く
大学側は、当初はシナン、ラティーファ、エウフェミアの派遣に難色を示した。
だが、今回は「戦闘」ではなく「補助教官」であることと、マリア教授の進言で、正式に派遣が決まった。
「まあ、今回は『戦闘』じゃないから、ある意味、公的機関お墨付きのアルバイトだと思えばいいか」
シナンは歩きながら話す。
「シナンさん。今度はエウフロシネちゃんを助けなければならないとか無いですから、余裕もありますよね」
エウフェミアは笑顔で応じる。
「シナンさん。今回は余裕があるから…… その……」
エウフェミアは少し躊躇したが、思い切って続けた。
「何もない惑星ですけど、魚は獲れるようになったので、その……」
「島を案内させて下さい」
「うっ、うん」
相変わらずシナンは攻めに強く、守りに弱いようだ。
(ノリを軽くしているとノリが軽い娘が集まって来たからなあ。こういう娘は新鮮かも)
まんざら悪い気もしないらしい。
◇◇◇
そんな中、ラティーファは誰とも会話せず、悶々と考え込んでいる。
(うーっ。また、会えることは嬉しいんだけど……)
(前回、こっちからああいうことまで、しちゃったからなあ。気まずくもあるんだよね~)
(こういう時に限って、旦那さんが「チャージオン」してなくて、憶えているって、あ~っ、どうしようっ)
三人三様の思いを乗せつつ、輸送機は「アクア3」に飛び立つ。
◇◇◇
輸送機は、ティモンが島長を務める島の宙港にゆっくりと着陸していく。
着陸と共に大歓声が上がる。
なんやかやで、この島を救ったヒーローたちなのである。
「エウフェミア……」
ティモンは期待を込めて、待ち構えていた。
エウフロシネが坊っちゃんに走った現在、父親の愛情をぶつけるべきは、エウフェミアである。
輸送機の扉が静かに開く。




