天国と地獄
こんにちは。紅狐です。
第六章スタートです。更新頻度は低めですが、本章もよろしくお願いいたします。
第六章は冬休み編から始まり春休み編までいきます!(多分)
それでは、本章も最後までお付き合いいただければと思います!
よろしくお願いします!
世間は冬休み真っ只中。
今年の冬は実家に帰ることはない。
帰っても両親は町内会の旅行で誰もいないからだ。
そして、杏里のお父さん。雄三さんも年末にはまた海外に行ってしまう。
こっちでの仕事もあるらしく、クリスマスの日以来会っていない。
そんなわけで、今年の年末年始は杏里と二人でゆっくりと過ごす。
はずだったのに──
「天童、ここホワイト入れて」
「うーす」
「天童さん、ここトーンで。ナンバーは書いてあります」
「うーす」
杉本さんと高山。なぜ俺の家にいる?
地獄の紙の山を増やしながら、隣の部屋からも声が漏れてきた。
「杏里姉、ここわからない! なんでこうなるの?」
「ここは、この公式を入れるの。これを代入すると、こうなるでしょ?」
「公式?」
「さ、さっきやったばかりだよね?」
「ははは。そ、そうだっけ?」
隣の部屋からは杏里と真奈のお勉強トーク。
そして、次第に増えていく目の前の紙。
やってもやっても減らない。
「んー、疲れた。そろそろ帰ってくるかな?」
杉本さんは椅子に寄りかかり、背伸びをしている。
一体昨日は何時に寝たのだろうか。
気のせいだと思うけど、ドリンク剤が増えている気がする。
「彩音、俺の分はそろそろ終わるぞ」
「ありがと、一回休憩にしようか」
──ガララララ
玄関の開く音が聞こえる。
「ただいまー」
待ってました! 買い出し班のご帰宅だ。
「休憩! 昼にしよう。体が痛い……」
今朝も早くからカリカリ、もう何枚仕上げただろうか。
「よっしゃ、天童お昼作って」
なんでやねん。
だが、ここで抜けなかったらまた何かを押し付けられる気がする。
「はいはい。わかったよ、隣にも声かけてくるな。二人はどうする?」
「高山君と一緒に見直し入れておくよ」
「っしゃ、いくぜ!」
高山先生頑張ってください。応援しています!
しかし、杉本さんも元気だねー。この二人の体力っていったい。
それに、なんだかクリスマスの日から微妙に仲がいいような気がする。
二人の間に何があったのか……。高山が話してくれるまでは、そっとしておこう。
「じゃ、できたら呼ぶよ」
「よろしく! あ、俺大盛りで!」
「はいはい」
俺は二人を残し、となりの部屋に行く。
──コンコン
「はいるぞー」
『はーい』
天使声が響く。
こっちは天国、あっちは地獄。
この温度差が激しい。
扉を開くと杏里と真奈は並んで座っており、勉強している。
それに、杏里の部屋は甘くいい香りがする。
「買い出し班が帰ったから、そろそろお昼にしようかと思うんだけど」
「お昼! 休憩! 杏里姉、休憩にしよう」
ペンを放り投げ、真奈は床に転がり始める。
「ごはんまではもう少し時間はあるよ。ほら、ここまで終わったら休憩ね」
むくりと起き上がり、真奈は杏里に熱い視線を送る。
「鬼」
杏里は真奈の頬をサイドに引っ張り、ブルドック状態にする。
「い、いふぁい」
「何か言ったのかな? このお口は?」
杏里の指導ぶりも様になってきた。
真奈にはもっとビシバシやっちゃってー!
「な、ないもいってまふぇん」
「なら良し。ほら、やるよ」
「ふぁーい」
こっちもこっちで地獄なのかもしれない。
「じゃ、できたら声かけにくるね」
「司君、私も何か手伝う?」
「大丈夫。杏里は真奈をよろしく」
「かしこまり。よろしくされました」
杏里は微笑みで俺を見送ってくれた。
こころなしか、真奈の顔色が悪かった気がするが、気のせいだ。
階段を下り台所に行く。
「お帰り。買い出しありがとう」
「ただいま。結構買ってきたけど、これで足りるかい?」
エコバッグからキャベツを取り出し、さわやかスマイルで俺に聞いてくる。
「大丈夫だな。遠藤も井上さんもありがとう。良君も助かったよ」
「いえ、そんなことないです。姉がいつもご迷惑を……」
「はー、疲れた。でも、少しはいい運動になったかな」
遠藤に井上さん、それに杉本さんの弟、良君も今回参戦している。
下宿の話も、杏里と一緒に住んでいることも遠藤達には話をした。
話したときは少しだけ驚いていたけど、話したからと言って何かが変わるわけではない。
今までと同じように接してくれる。
「さて、天童君。このキャベツ三個、どうするの?」
「ふふん。お昼はお好み焼きパーテーだ」
良君の頬が緩む。
お、いい反応ですね。
「みんなで作るのかい?」
「あー、どうしようか。良君は真奈のところで勉強している方がいいかな?」
なんとなくサポートしてみる。
「そ、そうですね。僕、料理はあまり得意ではないので。二階で勉強していますね」
「オッケー、できたら呼びに行くよ。真奈にお好み焼きが待っていると伝えておいてくれ」
良君は台所から出ていき、階段を上がっていく。
さて、この二人はどう処理しようか……。
俺に高山。杉本さんに杏里。
遠藤、井上さん、良君。七人分のお好み焼きは意外と大変なのでは?
「遠藤と井上さんにもお昼の準備手伝ってもらってもいいかな?」
「もちろん。あの作業はなかなか酷だからね……」
「だね。私も結構手と目が痛いよ。体を動かす方が性に合ってる!」
遠藤の目が遠い空を眺め始めた。
いえ、ここからは全く空は見えないんですけどね。
しかし、井上さんはすっかりと丸くなったな。
半年前はあんなにすさんだ眼をしていたのに、今は笑顔を見ることが増えた。
きっと、遠藤のおかげだな。
「よし、切りますか! 遠藤と井上さんはキャベツ担当。全部千切りで」
「了解」
「私エプロンとってくるね」
台所のテーブルでエプロンを身に着けた井上さん。
隣には遠藤が立っていて、なんだかムフフんな雰囲気だ。
も、もしかして俺はお邪魔なのか……。
後ろからはなんとなくイチャラブなオーラを感じる。
「優衣、気を付けてね」
「拓海も指、切らないようにね」
始まった。
千切りで始まるラブコメ。俺は、この状況に耐えることはできるのか……。




